春の海 公演情報 世田谷シルク「春の海」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    一つずつの時間の瑞々しさ
    冒頭から、一つずつのシーンに
    観る側をわくわくさせる空気があって。

    後半物語全体が俯瞰できる位置で
    その秀逸さがしっかりと生きてくる。

    堀川炎の世界からやってくる
    様々な感覚や表現の洗練に
    しっかりと心を掴まれました。

    ネタバレBOX

    まず、ダンスがとにかく圧倒的。
    山の手事情社的なメソッドにしなやかに制御された時間が
    作り手の発想と表現を大きく広げていきます。
    シーンのつなぎもしたたかで
    観ている側がぐいぐいと引き寄せられていく。

    その中で、コラージュされた。
    子どもたちの時間がとても瑞々しい。
    お芝居がナチュラルというわけでなく、
    むしろ、
    個々のしたたかなデフォルメの組み合わせからこそ浮かんでくる世界に
    その時間の肌合いと広がりがやってくる。
    とっくに忘れていた子どものころの感覚が
    すっと心に戻されたような感じ。
    ずるかったり、素直だったり、臆病だったり、意地っ張りだったり・・・。
    先生たちのキャラクター設定やお芝居にも
    すっと子どもたち目線でのフィルターがかかって。
    見えない子どもの存在が
    その世界にさらなる実存感をあたえて・・・。

    3年生時代のラジオの実験の喧騒と
    6年生の水の実験(この表現にもぞくぞくきた)の対比。。

    ヤドカリが示唆するもの、ロケット鉛筆が導き出す想い。
    山田君の記憶・・・。彼の手のかかり方・・・。

    その一方で大人たちの会話には
    役者たちのナチュラルな演技力がしっかり生きている。
    先生どおしの会話、「現在」まで時間を背負った会話。
    ダムに沈む村についてのモノローグ。

    月に一度の配達、それでも戻ってくる妹の心情、
    父親が作ったお弁当からふっと浮かびあがる現実の時間。

    終盤、DVDを観る中での
    過去と現在のニュアンスをつなげたザッピングのようなシーンには
    洗練があってとてもうまく機能していて・・・。

    コラージュされたそれらの時間が
    観る側をがっつりと取り込んでいるから
    DVD制作をきっかけに
    いったん閉ざされ忘れられた感覚が蘇っていく姿に
    沁みとおるように心を奪われるのです。

    終演前のダンスを観ながら
    変わっていったものや
    失ってしまったものと
    そして記憶がすべて
    観る側の内側ですっと一つに収まって・・・。
    一つずつのシーンが持つ
    観る側をときめかせるような表現の心地よい感触が残る中
    過ごしてきた時間を俯瞰する場所での
    心を満たすペーソスにも心を奪われる。

    役者たちも本当によく舞台を支え切ったと思います。
    それと照明や美術がとてもきれい。
    照明で切り分ける短いシーンの切れ味にも
    息を呑む。

    前回公演でも感じたことですが、
    様々な色や解像度を
    豊かな発想とテクニックに支えられた
    さまざまなメソッドで繰り出していく
    堀川の才能に改めて瞠目。
    この人の才能やセンスの発露を
    もっともっと見たくなりました。

    ☆★★

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    2010/04/10 11:38

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