磁界 公演情報 オフィスコットーネ「磁界」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    去年亡くなったこのプロダクションのプロデューサー綿貫林の追悼公演。急逝だったので積み残しの発注済みの作品の上演である。
    これは中村ノブアキの警察内部の企業もの。中村自身の劇団JACROWの作品は企業ドラマのを目指すというのが目新しく二三度足を運んだが、そのときは、経営についても、企業人についても認識が甘く、浅いドラマになっていて、その後、足が遠のいていた。今回は企業と言っても公共企業体の警察が舞台。こちらは、営業利益が唯一の価値判断になる企業とは、同じ企業体でもずいぶん違って、公共の理念、国民の負託、権利と義務、自助・共助・公助のモラル、職員自身のモラルと企業体のモラル、と人間的なドラマになる要素がたくさんある。このドラマでは、中年の姉妹が、ホストクラブ詐欺に巻き込まれた事件を巡って、警察の生活安全部の職員は、何でも持ち込んでくる(勝手な)国民に対してどうあるべきか、それは警察内部のヒエラルヒーとどう関わっていくのか、ということを事件サスペンス仕立てで、かなり人間的に追っていて、数年前とは様変わりの進境である。数多いこの欄の「見てきた」にある通り、飽きずに最後まで安心してみられるし、軸になる主人公の生活安全部の職員を演じる西尾友樹は、熱演。周囲の署長、課長、係長も、被害者の姉妹も、類型的な性格付けだが、隙なく演じている。
    これはこれで行き止まりのような気もするが、以前の生半可な企業ものよりずっと良い。無い物ねだりで言えば、この上に、誰でも感じている社会人の人としての生き方、それで構成される社会のあり方について方向を示すようなところ(裁判を起こそうとか、抗議デモに行こうというようなものではなく)があれば新しい現代劇への道が開けたようにも思う。
    まだどこか足りない。

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    2023/02/16 21:02

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