舞踏会へ向かう三人の農夫の妻 公演情報 かもねぎショット「舞踏会へ向かう三人の農夫の妻」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    20年後の初見でした
    不条理劇とダンスパフォーマンスをミックスしたようなお芝居。
    ストーリーが少々わかりにくいが、私は好みだ。
    「これがかもねぎショットなのか・・・」とある種の感慨を持って観ていた。
    わたしがこの劇団名を初めて耳にしたのはいまから約20年前、設立当初だった。小劇場ブームの真っ只中で「かもねぎショット」の上演スタイルは当時は斬新かつ衝撃的だったようで、たちまち人気劇団となり、毎公演、注目されて、専門家による評価もかなり高かったと記憶している。
    が、私自身は縁がなく、今回が初見。CoRichの若い観客のかたにどのように評価されるのかも楽しみであった。

    ネタバレBOX

    衣裳はヨーロッパの時代劇風なのだが、女性の役名は全員和名。次男と三男はもらわれっ子で血がつながっていないという三兄弟が町をめざして旅に出る。長男の嫁、如月こと、きさちゃんには旅先の長男からときどき手紙が届く。三男の嫁、弥生こと、やいちゃんは、きさちゃんの読む手紙の一文でだけ、三男の様子を知るが、三男は町へ向かう途中、出会った女に恋をしている様子。次男も三男も最初に出会って好きになった女をアデレードと名づけ、
    以来、惹かれた女はすべてアデレードという名で呼んでいるらしい。次男の嫁、皐月ことさっちゃんはかなり変わった女で、猫にしか関心がない予言者のような人物。
    如月は夫たちを追いかけて町へ旅立つ決心をするのだが、そのころ、夫たちはお城の舞踏会(実は武闘会?)に参加し、蜂巣状態に撃たれて絶命していたのだった。
    男の旅と家で待つ女たちのやりとりの場面が交互に出てきて、間をダンスでつなぐ。謎の街の女と皐月の両方を演じる渡辺信子が不思議な雰囲気の女優で、中性的というか、最初、男優の女形かと思った。
    如月の笠久美の意図的に抑揚のない台詞回しを聞いていると、いまでは小劇場では珍しくないこの演技形式が、80年代後半から90年代初頭の小劇場芝居で生まれたことを思い出した。
    三兄弟を演じる男優三人も三様の個性。中でも次男の金井良信が得体のしれない、いかにも小劇場らしい雰囲気を醸し出していて印象に残った。弥生の栗栖千尋の芝居が90年代の小劇場風なのに驚いた。こういう雰囲気の女優さんがまだ残っているとは。
    弥生の母の吉村恵美子の「間」が良かった。如月の母を演じる大草理乙子もラッパ屋所属で懐かしい劇団の女優。タイムスリップしたような気分だ。20年前、かもねぎショットの特徴について語っていた人の話の印象とさほど変わらぬ雰囲気の舞台だった。
    時間が止まっているような感覚。猫を演じた主宰の高見亮子さんの舞台挨拶を聞きながら、ああ、昔、仕事場でこの人に会ったことがある、と思い出し、懐かしい気持ちになった。あのころそのままの控えめで楚々とした少女のようなひと。
    当時の人気劇団の多くは解散し、主宰であった作・演出家たちは時代の寵児となって外部へ活動の場を移している。しかし、現在も「かもねギショット」は
    存続し、よく言えば、水の流れるような活動を続けている。正直、最近はこの劇団への90年代初めのような観客の熱狂ぶりは伝わってこない。
    私が観た日は客層も中年以上の人が多かったが、芝居のテンポがいまの観客の感覚とは少しずれているかもしれない。
    劇団の個性は大切としても、その時代、時代の新しい観客に支持されなければ、劇団としての未来はない。
    難しいところだが、「継続は力なり」であってほしい。

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    2010/03/30 01:55

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