おやすみ、お母さん 公演情報 風姿花伝プロデュース「おやすみ、お母さん」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    2回目。
    凄く合点がいった。作家の表現したいことがやっと理解出来た。
    自死遺族の物語は家族や友人恋人にある日突然、死を選ばれたことへのショック、遺された者の心の傷を語るものが殆ど。
    「何故相談してくれなかったのか?」
    「自分に何かしてやれることはなかったのか?」
    永遠の自問自答が続く。

    今作は自殺する娘が丁寧に母親に説明してくれる。泣き叫び怒り狂い喚き散らす母親。だが娘の決心は揺るがない。「やっぱり私がやることは思ったようにいかない。」と、さらに自己嫌悪の念が広がるのみ。
    自殺を決めた者の、この感覚の表現。
    「これ以上、自分のことを嫌いになりたくない。」
    「誤った選択を選ぶ位なら、もう何も選びたくはない。」

    そんな娘に何を言える?
    死を選んだ側の気持ちを的確に表現してみせた。

    ネタバレBOX

    セルマ(那須佐代子さん)とジェシー(那須凛さん)についても理解出来た。

    セルマは15の時に嫁ぐ。旦那のことは愛していなかった。旦那は多分癲癇持ち。発作が起きるとソファーでじっと収まるのを待つ。ジェシーは5歳の時、初めての発作を起こす。それから何回もあったが、セルマはそれをジェシーには秘密にしていた。
    内向的で口下手なジェシーに大工職人のセシルを引き合わせ、結婚へと導く。息子の誕生。ジェシーはセシルに誘われて乗馬に付き合った際に転倒、癲癇の発作を起こす。(彼女はそれが初めての発作だと思っていた)。ジェシーとセシルは離婚。(セシルはセルマの友達の娘、カーリーンと浮気をしていたが、ジェシーは知らない)。実家に帰るジェシー。父親は亡くなっており、兄のドーソンはロレッタと結婚して家を出ている。セシルに引き取られた息子はぐれて、ジェシーのネックレスを二つ盗んで家出。
    母との実家暮らしも十年経ち、ジェシーは父の遺品の拳銃で自殺することを決める。新しい薬が効いて、ここ一年発作は出ていなかった。兄夫妻がパジャマに着替える前の午後10時までに終わらせること。セルマからの電話で起こされ、また着替えさせるのは可哀想だから。午後8時10分頃に舞台は始まり、午後9時52分頃に銃声が轟いた。

    セルマ側の視点で観客は事態の推移を見守る。ジェシー側の視点で物語を見直すと、全く違う光景が広がる。本多勝一の『殺す側の論理』と『殺される側の論理』を思い出す。

    前回も那須佐代子さんが右膝か腿の付け根を痛めているような歩き方をしていた。だがカーテンコール時にはスタスタ歩いてくる。まさかこれも役作りだったのか!?

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    2023/02/05 23:02

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