まなざし 公演情報 掘出者「まなざし」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    「ニセモノ」というルール
    コンビニ勤務の木村慎司が主役。登場人物は木村の他に8人。
    白い箱のような部屋での芝居。家族ごっこのような風景。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    木村の前を今までに何人もの母親や父親や兄弟が通り過ぎて行った。5番目のおふくろには虐待された。「好きだよ。好きだよ。」と連呼しながら木村の顔を膨らましていった。そうして、今度は知子という血のつながった実の姉が現れる。

    しかし、木村は知子のマグマのような強い愛情と半ば強引に「一緒に暮らそう」という知子の存在にヒク。木村は5番目の母親以来、「愛情」と言われると恐い。だから、血が繋がっていない現在の父親との暮らしに満足していた。この父親・永吉は木村よりも年下だ。しかし木村はそんな事はどうだっていい。父親としての役割を演じてくれさえすれば、それでいいのだ。家族という概念を木村は持ち合わせて居なかったし、そもそもこの物語を構築しているシステムが「ニセモノ」というルールの上に成り立っているからだ。

    そして、女の顔を見分けられない父親。永吉は女だったら誰でもいいと思っている。キラキラと輝いてるロマンチックラブをエンジョイしたいだけとのたまう。

    一方で姉は行きずりの複数のオヤジと寝た。臭かった。期待はずれだった。そんな姉・知子は、彼女の母親の19番目の男が嫌いだという。パンチパーマをしたその男とセックスをした知子は母親に殺されそうになったという。

    また別のキャラクターの女は中二の時に男に声をかけられてついて行ったら「むかつく」といってボコられたという。顔が紫になったけれど、ドキドキした。もっとドキドキしたくて「もっと殴って下さい。」と懇願する自分が居た。自分のスタンスが解らない。苛められていないと落ち着かない、という不のオーラを持つ女。

    一方で「誰かの役に立ちたい。」と言ってタンスになる井上有希。彼女は「温めておきました。」といって、どらえもんのようにポケットから靴下を出す。まるで殿が穿く草鞋を懐に入れて温めていたサルのように・・。

    そして有希のストーカーをする耕平。「10年後に会う約束をしましたよね?あの時と変わらぬ同じ気持ちを持ってきました。」と吐く。


    それぞれのキャラクターがどこか歪みや闇を持って形成されている。そしてその形成さもいびつで滑稽だった。家族という一つの枠の中に出たり入ったりする人物像そのものが不のエネルギーを放出していて醜いのだ。カタツムリの中身を覗いてしまったような、生々しい不快感が唐突に込み上げるような芝居だった。

    登場人物の全てが、かつて受けた傷を癒すことなく、膿んだまま放置されて、今だにジクジクと活動しているようなさまだ。だから・・・自分に関わる他者とはそれなりの距離を置いて薄っぺらい関係の方が有難い。と言ってるようなものだった。少しでも現実味を帯びてくると、「それは『ニセモノ』というルールから外れる!」といって、舞台監督が飛んでくるのだ。ルールを破った者には「退場」させられる。だから彼らは『ニセモノ』というルールに則って、ずっと自分の役割を演じ続けなければならない。なるべく薄っぺらい感情で。

    好みがひじょうに割れる作品だと思う。しかし、誰でもがひっそりと隠し持ってる闇や歪さを表現した舞台だったなら、人間に対して過剰な期待を捨てた分だけ「木村の模倣家族」は本物かもしれない。


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    2010/03/23 19:22

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