いごっそうと夜のオシノビ 公演情報 Nana Produce「いごっそうと夜のオシノビ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    してやられた。
    よく知らぬままチケットを買ってぼんやりと眺めていたら「ああ、本当に良い喜劇を觀た」満腹感に充足。寺十吾氏の名前があると何か観たくなる。山田洋次のテクニックに中崎タツヤのリアリティーを足した感覚。嘘臭さ(作り物)のラインを器用に飛び越えてみせる。それは『庭劇団ペニノ』の手触りと同じ。今生きて在る生活者と地続きの光景、地に足の着いた本物の実感。まさしく自分と周りの連中の物語。

    ①『夜のオシノビ』
    舞台は寺十吾氏の経営する居酒屋「夜のオシノビ」。9年前に亡くなった彼女の命日に催される偲ぶ会。籍は入れていないが同棲していた。遺品になった生理用品さえ捨てられずトイレに置き続けている。最早、会に来てくれるのは彼女の古くからの友人、金子さやかさんだけ。手塚理美に似た雰囲気の美人。「もう次からは来ない。」と去って行く金子さやかさん。  
    翌年の十年目の命日、誰も訪れない筈の会に見知らぬ男性(浜谷〈はまや〉康幸氏)が訪ねて来る。

    ②『いごっそう』
    高知県の寂れた田舎町の居酒屋「いごっそう」。“いごっそう”とは、土佐弁で「頑固で気骨のある男」の意。店主は妻に先立たれた加山徹(てつ)氏。加山雄三の息子!激しい雨が叩き付ける中、常連の四人が来店。町役場の独身三人組(鎌倉太郎氏、有川マコト氏、浜谷康幸氏!)と東京から赴任して来た既婚男性(泉知束〈ともちか〉氏)。町中の男達が憧れている美人店員、青山祥子(さちこ)さんは未だ外出中。「自転車なので酒は飲ませない!」と厳しい店主。おっさん達は仕方なくオレンジジュースを呷るのだが・・・。

    「いごっそう」のメニュー、たこわさびが550円なのが気になった。他の物と比べて高くないか?高知県だからものが良いのか?

    もの凄い完成度の短編喜劇、松竹全盛期の映画館からの帰り道の気分。老若男女の胸が優しくあったまる。横山拓也氏に『男はつらいよ』を書いて貰いたい。

    ネタバレBOX

    ①さまぁ〜ず(バカルディ)のコントの感覚。寺十吾氏が三村マサカズに見えた。「どういう気持ちで俺はそれを受け止めればいいんだよ!」。ガラケーで撮ったハメ撮りがウイルスに感染して世界中に拡散されてしまったことへの謝罪。この酷い展開は「た組」っぽい。

    ②生瀬勝久っぽい鎌倉太郎氏、逆に渋味すら感じる48歳独身男性の哀しみ。泉知束氏はTKOの木本っぼい。素人童貞、フィリピーナと見合い結婚する有川マコト氏は上島竜兵に見えた。そして発狂する浜谷康幸氏。この人の狂いっぷりが二作品のMVP。青山祥子さんは巧い。確かにこんな娘がいたらおっさん共はのぼせて通うことだろう。本当によく出来ている脚本。『仁義なき戦い』のテーマ曲もズバリハマる。横山拓也氏の立ち位置とそこからの視点こそが日本人の国民性のど真ん中。

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    2023/01/27 14:51

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