兵器のある風景 公演情報 俳優座劇場「兵器のある風景」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    立場によって
    どんな場面でもそうだが各々が所属している団体、あるいは地方、政府、国の使い方によって偵察機にも殺戮兵器にもなるという技術開発者の苦悩と葛藤を描いた作品。

    以下はネタばれBOXにて。。


    ネタバレBOX

    いつの世も、科学者は常にこういった葛藤を抱え苦しんでいるような気がする。例えば原爆は作った本人が、投爆した後の地獄絵図のような悲惨な結果に一番驚いて恐怖を感じた。というのだから彼はコレを自分の十字架として永遠に抱えていく事になるのだ。

    政府プロジェクトの一員となった航空技術エンジニアのネッドは軍事テクノロジーを軍と開発して完成させた。それは無人航空機、つまり偵察機だったが、一方で兵器にもなり山ほど民衆を殺す事にもなる。これを知ったダン(ネッドの兄)はネッドの仕事を危惧する。そのような悪魔の道具を作っているネッドにその開発から手を引くように説得するも、ネッドは既に自分の開発した兵器が商品として取引される事を知る。

    政府は巨大な金を産むマーケットを視野に動き出していた。こうなると一介の航空技術エンジニアに力はない。ネッドは技術開発の所有権を主張するも、あっけなく覆され更にこれに対してあまりにも抵抗すると「クビ」を言い渡される。自分の立場が日に日に悪化していく事を知ったネッドは最後の手段として自分のプログラムを破壊し失踪してしまう。

    これを知った交渉役のロス、そしてブルックスは非情なまでの精神的圧力をダンとネッドにかける。この場面のダンとネッドの恐怖とダメージの表情が見もの。特にブルックスがダンにかける精神的拷問の例は無視や無言の直視虚無感、音の拷問、家族へのほのめかし・・など耐え難いものだった。そしてダンはネッドの所在を遂に白状してしまう。今度はネッドがブルックスに追い詰められる番だ。

    結果、ネッドはプログラム再生の暗号を白状してしまう。そうして政府にとってもう付加価値のない人となったネッドは妄想と悪夢を見る毎日となり、廃人同様な世界の住人となる。

    ネッドの葛藤、ブルックスが見せる他者への精神的な支配力、ロスの交渉のテーブルへの引きずり方、ダンの思いが絶妙に加味され震えるような舞台だった。勿論キャストの演技力は絶妙だったけれど、物語自体があまりにも鬱というか闇というか・・、まあ、闇な舞台は嫌いじゃあないのだけれど、なんとなく後味の悪い舞台だった。

    4

    2010/03/18 12:38

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  • KAE>
    >私は、逆に、兄が「いつもは無理だけれど、たまには顔を出していいよ、子供達もおまえに会いたがっているし…」と、肯定的に言ったように受け取ったものですから、ほんの少し、ネッドの人生に光明が差したように捉えたのです。

    ええ、ネッドが「今日、会いたい。」って希望した後に兄が放った言葉でしたよね。「今日はダメだ。子供たちが恐がる。お前の子供ではない。俺の子供だ。そうだ、今度の日曜ならいいぞ。会いに来いよ。いつもは無理だけれど、たまには顔を出していいよ、子供達もおまえに会いたがっているし…」と。
    これってダンの許可がないと安易には会わせないぞ。というお告げのようなものだと解釈したのです。
    はい。観てよかったのです。

    2010/03/19 10:50

    みさ様
    なるほど、そう取られたんですね。
    私は、逆に、兄が「いつもは無理だけれど、たまには顔を出していいよ、子供達もおまえに会いたがっているし…」と、肯定的に言ったように受け取ったものですから、ほんの少し、ネッドの人生に光明が差したように捉えたのです。だから、ちょっと希望が見えたかな?と。確かに、ナンシーを刺激しないようにとは釘を刺していましたけれど。
    でも、観てよかったと言って頂けて、ほっとしました。

    2010/03/19 01:56

    KAE>
    >そうしたら、観たいコメントがアップされていたので、思わず、メッセージさせて頂いてしまいました。

    ワタクシはKAEさんの「観てきた!」を拝読しまして、是非に観たいと思い急遽、チケットをゲットしました。笑

    >でも、どちらで観るとしても、大変よくできた本だなという思いは変わりません。

    ええ、勿論ですとも。そうしてその本を台無しにすることなくキャストらの達観した演技力は流石でした。特にブルックスの淡々と精神的に追い詰めていくさまは素晴らしかったです。無表情の恐さ、とでもいうのでしょうか・・。あなおそろしや・・・。

    >私のおススメしたせいで、もし後味の悪い思いをさせてしまったのでしたら、ご勘弁下さいね。
    後味悪いけど、観てよかったとみささんが思って下さったなら、嬉しいのですが…。

    いえ、とんでもないですよ。観て良かったのです。むしろ観ないともやもやして、いったいどんな作品だったのか・・・、と考え込んでしまう!笑
    また、後味が悪いというのは、ネッドが鬱になった後の展開に何の希望も得られなかったからです。ダンは子供たちに会わせたくないような感じでしたし、(まあ、ネッドの病み方を考えると当然なのですが・・・)ネッドは暗闇の中をこれから先もずっとさ迷い続けていくような予感さえしました。舞台はあまりにも重い空気のまま終演しましたよね?つまり、絶望的な終わり方でした。
    それで後味が悪いと感じたのです。

    2010/03/19 01:35

    みさ様
    いつもながら、的確なレビュー、なるほどなるほどと拝読させて頂きました。
    たまたま、時間堂の翌日にこの芝居を観たものですから、自分で勝手に両作を比較して観ているところがありました。
    それで、漠然と、この舞台のみささんのコメントを拝見したいなと思っていたのです。
    そうしたら、観たいコメントがアップされていたので、思わず、メッセージさせて頂いてしまいました。
    本当に、なるほど、なるほど!!
    たぶん、この芝居、テーマに重きを置いて観るか、私のように、歯車になった個人的人間ドラマに視点を置いて観るかによって、印象も感想も変わりそうだなと思っていました。
    でも、どちらで観るとしても、大変よくできた本だなという思いは変わりません。
    私のおススメしたせいで、もし後味の悪い思いをさせてしまったのでしたら、ご勘弁下さいね。
    後味悪いけど、観てよかったとみささんが思って下さったなら、嬉しいのですが…。

    2010/03/18 21:30

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