実演鑑賞
満足度★★★★
学生劇団出身らしい都会風な現代青春後期劇である。作者は四十歳半ば、劇団員もおおむねそのあたりで固めている。
青春劇だからそれぞれのタイプを対立させて描いていくが、軍に入って世を正したいという青年がかなり丁寧に追われているのは珍しい。それに対するのは女性の美容師。仲間にアジア人の日本在住35年の整体師。口は立つのにあっさり騙されて妊娠して捨てられる女性、彼女の元を離れられない意気地のない肥満男、食肉生産工場で神経を病む中年の男、浮浪者取り締まりを請け負う男、などが登場する。個々の話も人物もうまいが類型的だ。
エピソードを重ねていく手法で、話の運びは抽象劇と日常会話劇を混ぜた調子で、それはそれで良く纏まっていて、飽きないで見られるが、見ているうちに80年代に流行ったにぎやかな小劇場のいくつかを思い出した.あれはもういいとなったはずじゃなかったのか。
ひねり玉のつもりかもしれないが小洒落ているが力がない。引きこもりの右翼青年なんか面白いのに、説明が先に立つ。せっかく切り込めるところなのに尻すぼみ。思い切って突っ込むところがない。
この調子では、現代リアルの若い加藤拓也に、内容だけでなく技術的にもかなわない。「ほろびて」なんて縁起の悪い劇団名だ、と言われないように生き生きした劇世界を表現してほしい。