月並みなはなし[2010] 公演情報 時間堂「月並みなはなし[2010]」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    爽やかな修羅場
    比較的物語性のある会話劇を観ながら時おり考えるのは、「せりふ=本音なのかどうか」ということ、また、「嘘は前提とされているのか」ということ。

    限られた月への移住権をめぐって、議論し、対決し、揺れる人々。
    希望者自らが挙手制で他の候補者を一人ずつを落選させていく――という身もふたもない状況には当然、大きな感情の起伏が伴います。
    しかし、そこで不思議だったのは俳優達の佇まいが、どこかさっぱりと明るいようにも見えること。それはごく自然に舞台に立とうとする俳優のあり方で、意図しないことなのかもしれないけれど、彼らが「自然さ」「明るさ」をまとえばまとうほど、その裏には想像もつかないほど生々しい感情が隠されているようにも見える。このズレはとても面白いと思いました。

    舞台美術や衣裳、チラシなど、ビジュアルのセンスにもこだわりが感じられ、気持ちのよい空間づくりがされています。それだけに、個人的にはこの気持ちよさの裏にある「生」の方へ針が触れる瞬間がもう少しはっきり見えてもよかったというか、分かりやすかった気もします。





    ネタバレBOX

    「月の移住」という夢は一見ファンタジックですが、この作品を見る限りでは、人びとは月に行っても、地球に居るときと同じ生活を営むのかもしれません。いや、もしかしたら、この選ぶ/選ばれないという一種の「修羅場」は彼らに傷を残しさえするかもしれません。
    では地球に残された人は不幸だったでしょうか。落選した男が恋人と寄り添って立つラストシーンには、「生活していくこと」の現実と幸福をじっくりと噛み締めたくなるような美しさがありました。

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    2010/03/17 09:10

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