おやすみ、お母さん 公演情報 風姿花伝プロデュース「おやすみ、お母さん」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    那須佐代子さん、那須凛さん、すっぴんに近い薄化粧。那須佐代子さんの演技力の高さは最早誰もが知っていること、那須凛さんのシリアスな演技に見入った。かなり魅力的。役柄的には60歳の母と40歳の娘。8時過ぎから始まった時計の針が10時に近付いていく。矢鱈お菓子に溢れた部屋。
    那須凛さんの印象的な台詞。
    「行き先もないのにずっとバスに乗って揺られているのならば、何処で降りても同じことなのよ。」

    ネタバレBOX

    重苦しい話。だがそんなに戯曲が良いとも思えない。同じ死を望む話ならばユージーン・オニールの『月は夜をゆく子のために』の方がぐっと来た。那須佐代子さんと那須凛さんがちゃんとし過ぎているのかも知れない。どうしようもなくだらしない母親と、全てが上手く行かなくなって詰んだ娘の感じがしない。理路整然と自分が自殺した後にやることを指示するブラック・ユーモアなのだろうが、そこもどうもずれている。演出家の描いたイメージが綺麗すぎるのか。
    元気になると鬱病患者は自殺を行動に移すエネルギーを得るという。那須凛さんが理知的に自分の半生を省み、元気な今こそ自殺を実行しようと決めるのはリアル。論理的に遂行される娘の自殺、母の那須佐代子さんはありとあらゆる言葉を用いてそれを先延ばしさせようとする。死ぬ前に母親にきちんと伝える娘、無理と分かっていても必死に止める母。間違いなくそこに愛情と呼べるものが見えた。

    死ぬことを完全に決めたからこそ、母親と心を開いて語り合えたのかも知れない。そうでもなければお互いの痛みを伝える機会もない。癲癇の発作で仕事に就けず、旦那とも離婚、ぐれた息子は指名手配。

    ニルヴァーナの猟銃自殺したカリスマ・ヴォーカリスト、カート・コベイン。ニルヴァーナのドラマーだったデイヴ・グロールは自身のバンド、フー・ファイターズにて彼への歌を作った。(『Let It Die』)。ずっと繰り返される言葉。

    Why'd you have to go and let it die?
    (何故、君は自分を死なせなければならなかったのか?)

    自分という存在に最適な答が死ぬことであった。

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    2023/01/22 21:07

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