赤い薬 公演情報 MONO「赤い薬」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    現代丁寧語演劇
    今年の1月末に、青年団リンク・二騎の会が「F」という芝居を上演した。内容は新薬開発のための臨床実験に被験者として志願した娘の話。偶然だろうけど、MONOが12年前に初演した今回の芝居にも、やはり臨床実験の被験者たちが主人公として登場する。

    MONOの芝居では、役者の言葉使いに独特なところがある。
    独自の方言を使うというのもその一つだが、今回は方言ではなく、「です、ます」調の丁寧語をしゃべっている。「あなた」「わたし」を使い、ものを頼むときには「~ください」という。
    青年団の芝居を現代口語演劇だとすれば、MONOの芝居はさしずめ現代丁寧語演劇といえるかもしれない。もともと京都を本拠地とする劇団だし、メンバーにも関西(というか西日本)出身が多い。関西で現代口語演劇をやろうとすればそれは関西弁になるわけで、MONOの芝居を見ていると現代口語演劇というのが関東のものだということをあらためて意識させられる。

    ネタバレBOX

    医療センターの休憩室みたいな場所が舞台。雰囲気的には青年団の「S高原から」に近いかもしれない。
    身寄りがなく、経済的にも困っている男4人(水沼腱、奥村泰彦、尾方宣久、土田英生〉が被験者。いじっぱりの水沼と、お城マニアの奥村が変な人で、尾方と土田は常識派。4人とも派手な柄のパジャマを着ている。
    新人の医師(金替康博〉と看護婦(山本麻貴〉を加えた総勢6名の芝居。医師と看護婦は10年来、不倫の関係にある。金替の演じる医師の駄々っ子ぶりはかなり誇張されていて、普通ではちょっとありえない漫画っぽさ。イライラが高じるとすぐにスリッパを脱ぐ癖がある。
    ある日、実験用の薬が赤い色のに変わる。するとその効果で被験者たちは異様にポジティブになる。お城マニアの奥村などはもともと看護婦に気があったのだが、いきなり婚姻届を作成してしまうという暴走ぶり。
    ところがその薬の効果が消えたとき、今度は一転して廃人のような無気力状態が襲ってくる。
    被験者のうち、奥村、尾方、土田にそんな症状が現れるいっぽうで、日ごろから薬の服用や採尿をわすれることの多い水沼だけは難をまぬかれる。
    登場人物の中でいちばんまともかもしれない看護婦が病院の実験に疑問を持ち、彼らを救おうとする。
    医師に睡眠薬を飲ませ、そのすきに病院から脱出させようとするのだが・・・

    10年来の不倫関係も、被験者を廃人に追い込むかもしれない臨床実験も、描きようによっては悲惨な話だが、MONOの芝居ではあくまでもコメディ・タッチ。医師と看護婦が演じる愛憎の修羅場では、二人の間にお城マニアの奥村がポツンと取り残されて、動くに動けず呆然としてしまうところがやたらと可笑しかった。

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    2010/03/15 20:30

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