実演鑑賞
満足度★★★★
かなり期待していただけはあった。手堅く面白い。木下恵介の『破れ太鼓』や市川崑とか岡本喜八の初期作を思わせる。雪村いづみや江利チエミ、新珠三千代なんかが似合う話。昭和29年(1954年)初演の作品だが、今観ても誰もが共感するだろう。結局、物語のカタルシスとは耐えに耐えた人間の大爆発に尽きる。力道山がシャープ兄弟と綴った物語は永遠不変、人類のアーキタイプ。誰もが心の奥底に抱えているもの。
経済同友会の理事長、日向進吾氏は国務大臣に任命されそうな大物。由緒ある家柄で家父長として君臨。家宝は代々伝わる1500年前の馬の埴輪。新婚の孫夫婦も同居して三世代の家族を切り盛りするのは厳格なルールに縛られた女性達。
息子、中村利一氏の務める裁判所では愛し合う若夫婦が離婚調停を申し立てる不思議な事件が。
diamond-Z(ダイアモンド・ゼット)というももクロのファンクラブみたいな劇団名。役者陣は本格的で分厚い。
奥様役の菊地美奈さんがとても良かった。これで本業はソプラノ・オペラ歌手というのも凄い。
大旦那役の日向(ひゅうが)進吾氏 は志村喬+加藤武みたいで絵になる。冒頭、顔剃りから始まるのだが突き出た口髭というのも狙いか。
大奥様役の内藤通子さんは物語の要。この品のいい老婦人のクライマックスでの動きに観客はどっと沸く。
裁判官の旦那役、中村利一氏も好演。人の好い、仕事に誇りを持つ立派な男なのだが···。
会場は広く綺麗で観易い。
是非観に行って頂きたい。