月並みなはなし[2010] 公演情報 時間堂「月並みなはなし[2010]」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    しっかりとした会話で物語を紡いでいく
    この話は初めて観たが、他の劇団でも演じられるのがよくわかった。
    役ごとに見せ場があり、会話劇として面白く、演出方法によっては、もっと緊迫させることも、火花を散らすことも可能だからだ。
    役者も演出家も腕の見せ所があるということだ。

    今回の舞台は、じっくりと会話を見せてくれた。

    ホントにうまいよなぁ

    ネタバレBOX

    物語の本題に入るまでの導入部分が、やや長いと感じたが、本題に入ってからの会話は面白い。

    今までこのメンバーがグループとなって、長い間戦ってきたという背景がある上での会話なので、余計な説明を加えることもないところがいい。
    例えば、自己アピールも、散々今までにしてきたであろうから、ここでは論じるというよりは、感情とストレートに直結して語るというところも素晴らしい。

    余計な説明台詞は最小限なところがうまいし、会話として成立している。
    耳ちゃんの設定は、ないと観客が困るのだから、これはしょうがない。

    キャラクターもはっきりしていてわかりやすいし、どの登場人物も自分の気持ちにストレートなので、さらにわかりやすくなっている。
    ただ、部外者の1人「耳」の、あまりにも空気読めない的なところは少々疑問だ。あんな空気の中、いくら何でも爆笑はできないだろうに、と思ったりも。

    一番の根幹にある、彼らが、月に行くことに何を見いだしているのか、その本音をもう少し理解したかった。
    つまり、どの登場人物も「今の状況から逃げ出したい」という気持ちが根底に強くあり、それを「月に行ってこうしたい、ああしたい」という、まるで前向きなコトバに変換しているのではないのだろうか。だからこそ、彼らは、強迫観念のように「月に行きたい」となっているように思えた。
    その切羽詰まった気持ちが、台詞や行動に表れていたように思えるのだ。

    その感じ、あるいはホンネがもう一歩表現されていたら、さらに彼らの状況が伝わってきたのではないかと思った。

    強い自己主張で語り合う様子は、我々日本人的ではないのだが、60分というタイムリミットと月に行きたいという強い気持ちがそうさせているので、まったく違和感がなかったし、実は、言いたいことを言えてない人もいるという設定が、さらに素晴らしいと思った。

    討論はスポーツを感じた。ちょっと爽やかすぎかな。

    ただ、少々厳しいことを言えば、途中に伏線らしき伏線もないので、ラストはどのような展開にもできてしまう。その中で選択されたラスト(舞台のラストではなく、移住者選定についての結果)は、誰もが最初に考えつくものであったというのがちょっと残念だった(選ばれた者のみが行けないという設定)。
    しかし、この決定にぐだぐだと説明を加えることなく、すっぱりと切ったところは、おっうまい! と思った。

    さらに、舞台のラスト、2人が佇むシーンは、その時間の間合いがうまいと唸った。
    普通だったら彼女に何か言ったりして台無しになるところが、そうじゃなかったところに好感を持つ。
    女が妊娠していることも、観客には告げているのだが、それを討論の場でもラストでも言わないところも素敵だ。

    このあたりのうまさが、この劇団の良さだろう。


    どうでもいいことだが、「耳」ちゃんのお兄さん「ハナ」ちゃんは「鼻」ちゃんかなと思ったり(笑)。そう言えば、「ハナちゃん」と「ちゃん」付けで呼ばせていて、彼らとの関係を見せているのもうまいよなぁ。

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    2010/03/15 06:22

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  • SHINOさん

    コメントありがとうございます。

    >彼らの現況の気持ちには共感出来ても、月に行きたいとは思わない(魅力が分からない)自分にはそこが伝わらなかった。

    私は、「月」というキーワードは、ほとんど物語には関係ないと思っています。
    「ここじゃないどこかに行きたい」「そこに行けばもっと良くなる」なんていう気持ちが彼らにあったのではないのかということでの、「月」という目標だったのではないのかと思ったのです。
    ですから、その部分では共感できるところもあったのです。

    つまり、私は、「彼らがなぜ月に行きたいのかを明確に示してほしい」と思ったのは、「目的地がなぜ月なのか」ということではなく、「なぜ、今と違う、どこか別の場所に行きたいのか」という点についての本音があったのではないかと思い、それを明確してほしかったということなんです。

    また、事故に対する恐怖については、舞台の上でも語られていましたので、それは皆さんクリアしたのだと思いました。
    親が死んで、月を恨むのではなく、逆に行ってみたいと思うのは、その人と親との関係を表しているんだろうなあと思いました。
    親に対するリスペクトみたいなものが根底にあるお子さんなんでしょうね、きっと。

    ちなみに、SHINOさんは「観てきた」をお書きになってないのでしょうか?

    2010/03/16 04:33

    ネタバレに対するコメントです。そうなんですよね。彼らが何故そんなに月に行きたいのかの理由が現状から逃げたいから、それになっているので月に対しての魅力ではないのでずっと「何故月なのか?」と、彼らの現況の気持ちには共感出来ても、月に行きたいとは思わない(魅力が分からない)自分にはそこが伝わらなかった。
    スペースシャトルの事故を子供時代リアルタイムで目にした記憶があるので、死ぬかもしれないという不安が植えけられてるのと、個人的に高い場所が怖いから嫌なんですけどねf^_^;

    親が事故で死んだなら逆に(月を、スペースシャトルを)恨むだろうと思ったんですが、会った事がない親なら恨む事はなく、逆に成し得れなかった夢を自分が変わりに叶えに行く方向になるんですかね。会った事がない親でも自分なら月を恨んじゃうかも…

    2010/03/15 14:50

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