宝飾時計 公演情報 ホリプロ「宝飾時計」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    それぞれの場面が弾けて笑いも多い。何より人物(俳優のみなさん)のキャラが立っていておもしろい。大人の演じる子役二人もいい。無難な優等生の子役からママタレントになった小池栄子、ステージママに仕込まれて歪んだ自信過剰を抱えた伊藤万理華。ほかにも、空気の読めない間抜けで一途なマッチョの付き人(後藤剛範)は、小池との掛け合いでいつも笑いをよんでいた。ステージママ(池津祥子)も、愛ゆえに子どもをだめにする母親を嫌味のないデフォルメで好演していた。20年前の子役時代と30歳過ぎた現在を、同じ俳優が自在に行き来するのも見事だ。

    セリフのセンスも思わず感心する。「おいしいと言ってくれる関係にありがとう」(成田凌)「言い方が変。…おいしいと言ってくれることが…どうなの?」(高畑充希)「…いい!」「どうして評価口調になるんだよ! すきだよだろ」「そう」等々。子役からの女優、誕生日のサプライズ、崎陽軒のシューマイ弁当など、小ネタの使い方もうまい。しかし全体を通すと「?」が残る。ずしんと心にのこるテーマが立ち現われずに終わってしまう。

    舞台を亡霊のようにバイオリンをもって闊歩する椙山さと美。ピアノとバイオリン、ビオラ、チェロという豪華な生演奏も聞きごたえある。主題歌を歌う高畑の澄んだ高音がいい。2時間半(15分休憩)

    ネタバレBOX

    2幕は高畑充希は心の中の勇大(小日向星一)に自分の心を打ち明けつつ、恋人の大小路(成田陵=本当の勇大)との距離はなかなか縮められない。「大きな安心のないまま、明日の小さな約束(夕飯メニュー)を繰り返す関係にはもう疲れた」。その切なさが、メリハリ聞いた演技でよく出ていた。あえてテーマをでいえば、高畑充希演じる子役女優の純愛と言おうか。その愛は片思いではないが、結局届かない。背が伸びるのを拒否した20年間同様、愛も成熟することなく、中学生の初恋のような、心とは裏腹な行動と後悔、失うことを恐れた逡巡が続く。

    その届かない愛の相手=勇大の、失踪や別人になりすますという行動の理由がわかりにくい。「一番好きなショートケーキを素直に好きと言えない性格だから」だけでは、もやもやして未消化感が残る。

    心の中の勇大が形を持って現れる事情は長セリフによる説明しすぎ。幻の勇大当人も「僕は君が望んだことしか言わないから」など繰り返しすぎ。わかりにくさを警戒した作者の不安の表れだろう。

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    2023/01/19 01:42

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