月並みなはなし[2010] 公演情報 時間堂「月並みなはなし[2010]」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    脚本改訂により人気演目がさらに深化
     『月並みなはなし』は時間堂のオリジナル作品。劇団で再演が重ねられるだけでなく、俳優養成所の発表会や他劇団でも上演されている人気戯曲です。私もこれまでに3プロダクション拝見しています。

     近未来の東京。月移民を目指してきた6人の仲間の中から、たった1人だけ月に行ける人を選ぶことに。つらい試練をともに乗り越えてきた友や恋人たちは、自分の望みを叶えるために相手を蹴落とさなければならなくなる。

     舞台はほんのり木の香りが漂ってきそうな、おしゃれなレストラン。カラフルでロマンティックな衣裳を着た若い男女が、優しさで柔らかくつながったコミュニケーションを生んでいきます。

     拝見したのが初日前日のプレビューだったせいもあると思いますが(むしろそれが主な理由かもしれません)、演技の面で時間堂クオリティーを達成できているようには思えず、期待が大きかっただけに少々残念な鑑賞となりました。

     脚本のラストが大幅に変更されたことにより、これまでとは全く違う後味を残す作品に変貌していました。ハッピーとアンハッピーが混在し、揺れ動くのがとても良かったです。

    ネタバレBOX

     月面初のエレベーターガールをめざすキリン(髙島玲)の父親のエピソードが加えられたことにより、彼女が月移民を目指す動機の確かな裏付けができて、切実さが増しました。

     月移民を選抜する側のハナちゃん(木内コギト)は会議で選ばれたコウドウ(鈴木浩司)を失格とし、残りの5人を月移民にすると宣言します。これまでは「私たちが欲しいのは選ばれる人間ではなく、選べる(選ぶことができる)人間なのです」と述べていたのですが、そのセリフはカットされ、代わりに「法律により理由は公表できない」というお役所らしい返答となっていました。

     その理不尽さに耐えかねたパン屋のアマネ(金子久美)は仲間にも絶望し、「もう二度と顔も見たくない」と言い捨てて部屋を出て行ってしまいます。つまり模範解答を導き出して試験に合格したものの、彼らの心はバラバラになってしまう悲しい結末でした。

     地球に残ることになったコウドウとまだ彼に妊娠を告げられずにいる恋人(原田優理子)との、無言のシーンで終幕。このラストシーンは今まで観た中で一番の出来だったように思います。

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    2010/03/13 20:46

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