十二人の怒れる男 公演情報 劇団東京乾電池「十二人の怒れる男」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    乾電池が知名度の高い定評ある名作とどのように取り組むか?
    今年の初芝居は、ザ・スズナリ。土曜日の午後の公演はどこかの現劇グループの女性団体客
    も入って、開演前から劇場らしい賑わいの声があって正月らしい芝居風景だった。
    乾電池に翻訳劇はどうかと思っていたが、今や、日本も欧米と肩を並べるG7。五十年前の戯曲とはいえ、先進民主主義国が当面した諸問題は、現在の我が国との共通の課題も多く、日本人の俳優が演じても違和感がないばかりか、日本の現実の問題とも重なるところも多く、客席には緊張感があった。
    柄本演出は、かなり現戯曲をいじっているがその狙いは大きくは次のようなものだろう。
    まず、原作の各登場人物の背景の説明をできるだけ省いて、たまたまその場で出会った人々が話し合うという、いまのSNS状況を思わせるコミュニケーションのドラマにした。このため、原作にあった、ニューヨーク人情物語的側面がほとんどなくなって、薄い人間関係の中のディスカッションドラマにしている。これは新しい演出だが、その功罪はあって、この事件の背景はよくわかるが、各陪審員の判断の根拠がよく解らない。ことに最後に翻意する陪審員の親子関係が全くカットされているので翻意がただ少数派になったのでやーメタ、という風にもとれる。ほかにも、貧民街に育った人、努力で成り上がった人、さまざまな階層の人々の背景が現戯曲では書き込まれているがそこをずいぶん短くしている。そういう狙いも今の芝居ではありだとは思うが、最後に写真を出している以上、説明不足になっている。そこもどーでもいいんだ、というところまでは思い切れていない。しかし思い切ったら別の芝居になってしまいそうだ。全体で15分は切っているのではないだろうか。1時間45分、休憩なしだった。
    二つ目。11対1で反対を始める陪審員8号は、この芝居では主役で、いままでも主演者が演じてきた。そこをほとんど知られていない飯塚三之の助をキャスティングしている。平凡人の勇気というところを飯塚はよく演じているが、戯曲自体が立て役で書いてあるので、どうしても荷が重くなるところがある。それはすべての陪審員にもいえることで、柄にはまっている谷川昭一郎や吉橋航也、杉山恵一はのびのびやっているが、ほかはかなり窮屈そうだ。出演者では陪審員長の岡部尚が健闘している。
    男性だけで演じられる舞台を見ると、この五十年でずいぶんジェンダーの問題は進んできたな、と思う。今、アメリカなどではこの芝居は打てないのではないだろうか。
    そういうアピールにもなっている。そこが乾電池らしいともいえる。

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    2023/01/08 00:20

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  • 「最後に翻意する陪審員の親子関係が全くカットされている」とのことですが、途中にこの3号陪審員が写真を見せて「息子だ。やつには喧嘩の仕方を教えてやったが、15歳の時に俺を殴って家出してそれきりだ」と言うシーンがあったのですが、それでは足りないと言うことでしょうか。
    別の劇団で見た時は最後に8号陪審員が3号陪審員に「彼(審議されている少年)は君の息子じゃないんだ」と言うシーンがあって、そこでやっと3号が強固に有罪を主張した理由がわかったと言う情けない私です。

    2023/01/17 12:31

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