満足度★★★★
もっと大きな劇場で観てみたい、歌あり踊りありの家族ドラマ
年季の入った小さな喫茶店を舞台に大勢の登場人物が派手に動き回る、笑いあり涙あり、歌あり踊りありの人間ドラマでした。一見平凡そうな日常会話に13人もの登場人物の背景や、後からつながる伏線がしっかりと書き込まれており、ベタだけど思わず微笑んでしまう温かいエピソードもたくさん盛り込まれていました。決して幸福だとは言い切れない状況にいる、さまざまな夫婦、家族のカタチが示され、軽快な人情喜劇に終わらない深い味わいがありました。
文脈の通った戯曲を感情熱い目の演技でにぎやかに見せていくお芝居ですが、舞台に誰もいない無言の間(ま)も大切に演出されていました。ただ、そうやって成功している場面があるがゆえに、舞台からの出はけや移動の必然性などの細かい齟齬が気になったりも。
また、大勢の登場人物およびそこに生まれる関係性を、2時間におさめるのはもったいない気がしました。内容も規模もスケールアップさせての再演が期待できる戯曲だと思います。
役者さんの中では、自分の仕事もしながら母が残した喫茶店を切り盛りする息子役の川本裕之さんが良かったです。バンドマン(安東桂吾)の出戻りの妹を演じた眞賀里知乃さんも印象に残りました。