富士見町アパートメント 公演情報 自転車キンクリーツカンパニー「富士見町アパートメント」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    【Bプログラム】「冬」の次には必ず「春」がやってくる、そんな舞台
    1本が1時間と少々の2本立てながら、それぞれの観劇で、とても豊かな時間が過ごせた。満足感と満腹感がある。

    人がいて、夢があって、人生がある、そんな物語を見た。

    ネタバレBOX

    そういう設定の打ち合わせがあったわけではないのだろうが、両方とも夏から始まり、冬に終わる物語で、「夢」と「現実」と「人生(人)」を描いた作品だった。
    舞台が「冬に終わる」ということがポイントであったように感じた。

    巧みな会話(台詞)と出演者たちの存在があり、笑いもあるとてもいい舞台だったと思う。

    『リバウンド』(作:鄭義信)
    3人の女性からなるコーラスグループの物語。
    同じ体型をした3人が、黄色の明るい衣装で舞台に現れたときに、舞台も明るくなり、見ているこちらも自然と笑みがこぼれた。

    まだ、未来は明るく可能性を秘めていて、そんな彼女たちの明るい時代を象徴するようなとてもいいシーンだった。そして季節は夏。

    暗転後の十数年後では、クリスマスイブの冬。引っ越しのための段ボールが部屋のあちこちにあり、スウェットなどの動きやすい格好でいる。彼女たちの今を象徴している。
    その対比がとてもいい。

    最初のシーンからここまでの間に彼女たちにあったことが、うっすらと見えてくる。

    歌手になるという同じ「夢」を持ち、(女として)幸せになりたいというそれぞれの「夢」もある。
    3人が揃って歌手としてやっていくことは叶わなくなったが、中年に差し掛かったとはいえ、幸せへの「夢」はまだある。それは、若い頃のように、光り輝いている夢ではないかもしれないが、終わったわけではない。

    互いへの感情や、抑えた感情(悔しさ)、大人の女性たちのそんな気持ちが丁寧に綴られていた。
    中年女性であるのだか、愛らしささえ感じた。

    そして、彼女たちの歌も心に響いた。



    『ポン助先生』(作:マキノノゾミ)
    漫画家志望の青年に、過去の人になりつつある漫画家と、編集者の女性の物語。

    漫画家志望の青年と過去の人になりつつある漫画家(ポン助先生)の互いの利害関係が一致して、周囲には秘密でマンガを合作していくのだが、互いにクリエイターであるという自我もあるからだろう、その関係には亀裂が生じてくる。

    青年とポン助先生の心のバランスがよい。実は弱い者同士だったのだ。
    肉食系でめんどくさいポン助先生と、草食系の青年の対比がとてもよく、プラス女性編集者の仲立ちがいいアクセントになっていた。

    予定調和かもしれないが、新たな一歩を踏み出すエンディングはよかったと思う。


    両作品ともに、舞台のラストシーンは「冬」であるが、冬の後には必ず「春」がやってくることを予感させる、温かいまなざしが登場人物たちに注がれていた。

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    2010/03/03 07:40

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