実演鑑賞
満足度★★★★★
物語はいきなり殺人の詳述で始まった。
そこから続くのは、一見平凡なしかしどこか不自然な家族のやり取り。そしてしだいにわかってくるその理由。
家族の身勝手さや隣人の過干渉だけでなく、恋人との未来を夢見ることが彼女をいっそう追い詰めていく。
息を詰めるように舞台上で進んでいく出来事を見つめる。そういえば、観終わって字を書こうとしたら手が震えていた。集中し過ぎていたからだろう。
彼女の感じている閉塞感とやるせなさに共鳴し、悲劇に向かっていく緊張感が途切れない約2時間。
事実だけ見れば何の救いもない終わりなのに、事件が起きた時の家族の結束とある種の高揚を描き、そしてあり得たかもしれない幸せな日々を見せることで、悲劇は悲劇のまま後味の悪くない幕切とした手腕が見事だった。
キャストもそれぞれ印象的で、見応えがあった。一見身勝手さや頑固さ、あるいは投げやりに見えた言動にも、それぞれの思いや事情があるのだとわかってくる終盤の展開が心地いい。
面白かった、というにはつらい内容だけれど観ることができてよかったと思う。