荒人神 -Arabitokami- 公演情報 壱劇屋「荒人神 -Arabitokami-」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    五彩の神楽最後の作品、「荒人神」を見てきました。初演を見たので結末は知っていたのですが、知っていたからこそ、過去4作の前回を上回るすごい主人公達がどんな戦いをするのかが楽しみで、12月が待ちきれませんでしたが、ようやくこの日がやって来たかという感じです。

    前半は例のごとくダメダメ人間達がたくさん現れて、荒の悪の心がだんだん育っていくわけです。
    それを察知していた白も元と一緒にどうにかしようとしていましたが、元が殺されそうになることで、闇落ちすることになるのですが、今回正直、私は内心、劇の中盤は人間側ではなく「悪感情側」の応援をしてしまっていました。
    決して荒が闇落ちしたことを良しとするわけではなく、またすべての人間が悪いというわけではありませんが、前半のダメダメ人間達を初演・再演含め何回もリピートしているうちに憎しみが増幅し、「少なくともこいつらは罰された方がいいな」と思うようになり、無意識に応援していたわけです。ある意味、荒と一緒に私も闇落ちしていたことになります(苦笑)

    白の話ですが、初演の畠山薫さんの白はどちらかというと中性的な印象を勝手に持っていたのですが、北川さんの白はアイドルさんだけあって仕草から女の子な感じが強く出てて、でも空手経験者であるためか、パンチやキックは凄く鋭かったのが私的にギャップでした。

    悪感情の3姉妹の事で言いますと、正直初演に寄せた演技をするのではないかと無意識に思っていましたが、継続の丹羽さん含め、初演とは全く異なる演技で私達を魅了してくれたと思います。初演に勝るとも劣らない、丹羽さんに関しては、初演をはるかにしのぐ演技だったと思います。
    3姉妹個々の動きは違えど、それぞれに人を超越した存在であることを感じさせる動きがあり、観ている私達に「あ、こんな人達に勝てるわけないよ」と思わせる説得力があり、その「人を超越した存在+闇落ちした荒」に過去4作品の最強ヒーローが挑んでいく構図がめちゃくちゃ面白かったです。
    特に、初演の時驚愕して思わず声をあげそうになった主人公’s登場の場面、主人公’sと荒との超高速殺陣の応酬からの、悪感情3姉妹による「死者の行進」
    この辺りは体中からアドレナリンが出て涙が出てくるほど興奮しました。

    ①黄(こう)+元 VS 荒+靄(もや)
    黄役の小玉百夏さんは以前竹村さんとも一緒に殺陣を学んでいた凄い方で、女性なんですがありえないくらいの身体能力と技術を持った方。靄役の丹羽さんは壱劇屋女子の中でも屈指の殺陣スキルを持つ方で、しかもこの日のために腹筋がバキバキになるくらい肉体改造をされてきたということで、対戦を楽しみにしてました。
    序盤は荒VS黄の戦闘が中心でしたが、荒と戦っている間にも靄の容赦ない重力攻撃が来るので、黄にとっては大変だったはず。でも観ている私達にとってはこの不意打ちの重力攻撃がすごく面白かった。重力攻撃も舞台にいる人全員で表現する「人間CG」なので、倒れている人も含め全員での見事な演出でした。
    ラストは「キャット・ファイト」、要はタイマンのどつきあいです(笑)
    でも黄の殴り方が本格的過ぎてストレートパンチやフックの軌道がめちゃくちゃ美しかったし、靄も指の動きから重力を込めて殴っていることが分かったので、サンプラーの音ともあいまって凄い破壊力であることが伝わってきました。
    リピートしてる間この対決が来るのが楽しみで、今か今かと待っていました。

    ②盲人(もうと)+元 VS 荒+霧(きり)

    盲人役の吉田青弘さん。初演の時も瞬発力・跳躍力が凄くてまたあのすごい殺陣が見れるのかと楽しみにしていましたが、今回は初演をさらに上回るスピード、特に相手との間合いを詰める速さが数段向上しており、座頭市ばりの剣捌きも相まって、剣を抜いたかと思うと目の前の2,3人があっという間に斬られているように見えました。霧については死者を生き返らせて戦いに参加させるという遠隔&間接攻撃が中心であったため、戦いの中心は荒+アクモブと盲人の戦いでした。
    戦いの終盤で登場した「三節混」も片方の先がとんがったものにパワーアップしており、竹村さんの操作も初演よりはるかに習熟していたし、何より日本の殺陣ではあまりなじみのない武器なので、興味津々で見てました。

    ③表助+元&ろうそく男 VS 荒+霞(かすみ)

    表助役の岡村さんが出てくるが、様子がおかしい。目は異様に光っているし、正統派の殺陣の表助が背車刀のようなトリッキーな殺陣を、そして横にいた元を荒々しく蹴とばして、「これ、中にいるの、もしやあいつでは・・」ってなりました。この辺りのワードレス演出本当に素晴らしかった。
    霞はろうそく男を魅了できるわけもなく、もう勝ち目はないわけで、ただクルクル回りながら斬られる様も、盾になって倒される様も最後まで美しかった。
    荒とろうそく男の殺陣は目で追うのも大変な速さで、突然体力100%の身体能力おばけと戦うことになった竹村さんも大変だな、と思いつつ見てました。

    ④ミラ+元 VS 荒+黒い何か

    体力・技術では荒に敵わないミラ、でも荒を正しい道に引き戻すために懸命に気持ちで戦うミラと、そうはさせじと術を使って苦しめる「黒い何か」
    私は西分さんの、戦いの中にしっかり演技を入れた殺陣が以前からすごく好きで、初演の時もこの対決は鬼リピートしていたシーンの一つですが、特に
    胸をバンバン叩くところが凄く気持ちが伝わってきて、この頃から私の中でも悪感情チーム応援から主人公's応援に戻ってきたと思います。
    私も荒と一緒に闇落ちから救ってもらったのかもしれません(笑)

    ラストの「黒い何か」との対峙シーン、初演の時に「ああ、なるほど~」ってなりました。悪い感情も自分の中の一部で、これからもずっと付き合っていくものですもんね。
    「黒い何か」(←言いにくいので次回名前をつけて欲しい)を演じていた美津乃あわさんの演技の圧も「いよいよこの人来た~」と見てる方がぞくぞくするものでした。

    最後は全員で踊って大団円を迎えるわけですが、憫笑姫チームが回替りでいろいろやってくれて、8月の憫笑姫がまた戻ってきたような嬉しい気持ちになったし、千秋楽には三田麻央さんと谷口洋行さんが出演していたのも胸熱でした。

    この「荒人神」ですが、超高速殺陣、しかも演技のしっかり入った殺陣であり、かついろいろ考えさせられる感動的なストーリであったため、正直私が今まで見た舞台の中でも過去一だと思いました。
    何年後でもいいので、またいつか再再演を期待しています。







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    2022/12/28 09:50

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