実演鑑賞
満足度★★★★
旗揚げ公演にお目にかかる事はそう多くないが、意に叶う所あらば応援したくなるのも人情。もっとも残念ながら長続きするユニットもそう多くない(演劇を続けて行ける事自体稀有で大変な事)。さてこの度はチラシに写る中心人物らしき男の風貌とユニット名の謎めきが(実力派な俳優、演出者の名が見えてもなお)高く、中味は全くの未知数で心の構え方が定まらぬ待ち時間を過ごした後幕が開いた。(劇場に着いたのも早かった。19:30開演だし。)
つけ焼き刃と卑下した訳ではなかろうが堂々たる旗揚げ公演だ。四人が喋り倒す濃い一時間半は「中年の痛い現実」を焙り出して傷口を引っ掻き合う摩擦熱の高い劇であった。役者が皆巧いが、「例の男」の特異な存在感が舞台でも謎めきを放って、少なからず独特な味を与える。役の本人性が高く、この素材を巧く使った芝居とも言えてしまえばしまえそうなニュアンスも若干漂う。勿論「劇」の充実した中味があった上での話だが終演しても残る未知数さが「今後」を待望させる(と同時に一発に終わる予感もなくはない)。ので、ぜひ第二弾、三弾と続けてほしい。
作者・深井邦彦の名はグッドディスタンスのレパートリーに登場する作者名として記憶に残るが、今回改めて調べてみると、元張ち切れパンダ劇団員であり自分はその最終出演作も観ていた(あの時のあれだったか・・)。俳優業も皆無ではないようだが退団後は劇作を続け、そうして現在に至る新人劇作家の一里塚を見た思いもある。