孤独の後始末 公演情報 海ねこ症候群「孤独の後始末」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い。初日観劇、ほぼ満席。
    現代的で話題性もある内容を、結婚式場で働く人々の観点で描いた物語。そのテーマ性と着眼点、描き方の発想・柔軟性に驚かされる。ただ掘り下げが浅いような気がして、その点が惜しい。

    当日パンフに 脚本担当の坪田実澪さんが、別の意で「何故こんなに傷つけ合い、貶し合わなければならないのか。逃げてしまえば楽な生き方なんかいくらでもあるのに、何故向き合う方を選ぶのか」と記している。この文章と同じことを、劇中の父と娘に負わせることが出来れば、もっと深みや滋味ある内容になったと思う。結果、無難に まとめた といった印象になったのが勿体なかった。

    年の瀬に、また若くて 力 を感じさせる団体「海ねこ症候群」に出会えたことを嬉しく思う。
    既に第3回本公演の予定があるという、その伸びしろに期待するところ。
    (上演時間1時間25分 途中休憩なし)【Aチーム】

    ネタバレBOX

    舞台美術…冒頭はスタッフルーム。後景は暗幕、柱(細長い白色衝立)のようなものが 横にほぼ等間隔で並んでいる。2つの長テーブルと椅子6脚、中央のモニター(額縁)に結婚式の写真が見える。場景に応じてテーブルや椅子を移動 変形させ時間と状況等の変化を表す。照明の諧調によって後景の衝立らしきものが高層ビル群に見えたり、鯨幕のような不吉な雰囲気を漂わす。ラストは式場。赤いバージンロード、参列者の椅子に白ベールと花飾り。白色衝立にも花輪。スタッフルーム(事務所)と式場内という違いを丁寧に演出する。

    次の依頼は 同性婚(女性同士、登場はしない)、ウエディングプランナー・木嶋綾乃は戸惑うスタッフに引き受けたことを告げる。同性婚という話題性、それを結婚式場のスタッフというバックヤード的な立場で順々に描く。そこに気持(感情)と仕事(役割)という適度な距離感をもって描くところが上手い。また結婚式という期限がある設定は、それまでに何らかの結果というか結論を出すため、テンポよく展開していく。

    同性カップルの1人が、この式場のマネージャーの娘である。その事を隠して綾乃は準備を進めており、マネージャー・上原正道も同性婚に賛意を示していたが、娘となると話は別らしい。建前と本音、自分に関係なく仕事であればなんでも受け入れるが、親の立場になれば激怒し反対する。綾乃は云う、娘さんと向き合ってと。またスタッフの1人、パティシエ・倉持春子が同性愛者のような描き。この2人が激情して言い争うようになるが、居合わせたスタッフが止める。娘が登場しないことから、春子を介して上原と本音を語り合わせてほしかった。日本における同性婚、その法的制約、その実態である子や遺産等の当人の問題や好奇という世間、その社会的偏見の問題に もう少し触れてほしいところ。

    綾乃は、スタッフのドレスコーディネーター・師岡拓真と付き合っている。しかし2人の気持は結婚に踏み切れない。どちらかと言えば、綾乃はキャリア志向のように思えるが、そこに拓真が気後れしているような。拓真 曰く、「幸せに出来るか自信が…」云々は、昔ながらの性差意識の囚われか。男らしさ女らしさ、という何が「らしさ」なのか曖昧な感情に縛られていることも描く。
    公演説明は、同性婚を示唆しているようだが、もう少し広く「結婚」という男女意識を描いているかも知れない。上原は云う、結婚する相手とは壊れ(喧嘩し)ても、再生(仲直り)して乗り越えられるらしい。
    さて、先の当日パンフの文章には続きがあり「演劇というある種『逃げられない世界』に憧れを抱いている」とある。同性婚の問題にもう少し踏み込んで と期待するのは、この強い気持に伸びしろを感じるし、次回公演も楽しみにしているからである。

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    2022/12/23 08:16

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  • ご来場誠にありがとうございました。
    感想とても嬉しく思います。
    今後、学びを深め様々な作品をお届けできたらと考えておりますので、また、機会がありましたら是非よろしくお願いいたします。

    2022/12/24 22:51

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