サブマリン 公演情報 マチルダアパルトマン「サブマリン」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    「青いサブマリン」を観劇。前回見た「ゴンドラ」では人物の描き方が自然でそれぞれの行動に至る動機や感情の流れがスムーズでとても惹きつけられたが、今回のお芝居では登場人物の感情や言動の描き方が不自然に感じられる箇所がいくつもあってモヤモヤした。

    ネタバレBOX

    例えば「自分が幼いころに失踪した父親の姿を覚えていない」という妹が、父親に似ている(らしい)ホームレスと出会った途端に抱き着くというシーン。獣のような臭いで周辺住人から苦情が出るような見ず知らずのホームレスに若い女性がいきなり抱きつくなんてことはあるだろうか?幼いころの捨て犬のエピソードが行動の源泉になっているとはいえ、流石に無理があると思った。
    「5歳で父と別れた」と言っていたけど、5歳なら普通それなりに記憶は残っているはずでは?また、激臭が漂っているホームレスを一晩家に泊めることに何のためらいもみせない姉の態度にも違和感を感じた。

    私は「アットホームチャンネル」というホームレスの人にインタビューをするYOUTUBEチャンネルを好んで観るのだけど、ホームレスの人は概ね饒舌でよく喋る。それに対し姉が連れてきたホームレスはまともに会話もできず感情も出すことができない。このような状態のホームレスが他人の招きで果たして家までついてくるものだろうか?そして、もはやホームレスというより「障害者」と呼ぶべき重度のコミュニケーション障害を抱えた人物を軽々に家まで連れてきて、その人の前で「ホームレスは犬じゃないよ」などと会話する無神経さにも違和感を覚えたし、そもそもホームレスを捨て犬になぞらえるセリフに作者のホームレスに対する無自覚な蔑視も感じた。

    とりわけ姉が何を考えているのか釈然とせず「何の脈略もなく唐突にピザの話をする」「勝手に家にホームレスを連れてくる」「出ていった父とおぼしきホームレスを探そうともしない」「常にスウェット姿」「同棲相手の男性に対する愛情がほとんど見えない」など、まったく魅力的ではないのに、フランス映画の女優のように「別れようかな?別れないでおこうかな?」などわがままに振る舞う姿に苛立ちを覚えた。

    それぞれの内側から突き動かされる行動原理が見えず、人物像がこちらに鮮明に迫ってこないのが残念だった。

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    2022/12/14 12:49

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