実演鑑賞
満足度★★★★★
#小島聖 #池岡亮介
#小久保寿人 #森川由樹
#岡崎さつき #阿岐之将一
#楠見薫 #荒谷清水
#横山拓也 #大澤遊
(敬称略)初日からの2回目。またとんでもない作品が生まれた。最初に言っておくが、絶対に観ておくべき。
恋は止められない。幾つになっても素敵な人にトキメク気持ちは止められない。ましてや二十歳前後の若者なら尚更。そして恋する者はいつだって疑心暗鬼。自分にも相手にも他人にも。自分が受け入れられない時には防衛本能が働くのは仕方ない。恋の痛手のさざ波は、コントロールを失い暴走する。凪のように穏やかに見えた友情にポツリポツリと落としてしまった雫が、文字通り波紋を広げて、やがて嵐を呼び荒れ狂った時化が優しい家族まで道連れにしてうねり始める。
語弊を恐れずに書くが、新国立劇場演劇研修所の修了生の世間的認知度は高いとは言えないだろう。けれども、同じ場所で学び身につけたスキルの共通項を持った彼等が生み出す、相手を見て聞いて動かされて表出し転がっていく物語の強度は圧倒的で、観る者の感情を揺さぶり飲み込んでいく。
自分の正義が他者の正義になり得るか否か。完全なる思想なんて無い。思想は常に矛盾を孕んでいる。
大学生の娘を持つ親として、我が子とその友を大切に思う親の気持ちがよくわかる。かつて自分が大学の仲間を何度か実家に招いた宴で嬉しそうにもてなし飲んでいた両親の姿が蘇った。
無かったことにしたい悲しい出来事。封印したい過ち。それを引き起こしてしまった自責の念。救えなかった自責の念。関わる誰もが抱いたやるせなさがヒリヒリと染みる。
目の前でドラマの中に生きてみせてくれた素晴らしいキャストに拍手を送りたい。
期待を裏切らず素晴らしい本を書き上げた横山さんに大喝采を。
そして、あの美術、あの照明を演出した大澤さんを讃えたい。
ラストや美術について、初日終演後に横山さんに「どこまでト書に書き込んだのか」訊ねた。優れた脚本家と優れた演出家の融合から生まれた素晴らしい演劇作品が、たくさんの人に届くことを願ってやまない。