うわつら 公演情報 殿様ランチ「うわつら」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2022/12/10 (土) 14:00

    このテイスト、とっても好きだ!誰も体験したことの無い「死」の周りをあーでもないこーでもないとぐるぐる周りながら、来たるべき日に向かって進んでいく。サラリとしているので油断していると、ズドンと来て泣けてしまう。殿様恐るべし。

    ネタバレBOX

    人気小説家が膵癌の末期と診断され、余命宣告を受ける。
    「初めて体験する死が楽しみだ」と、それを受け入れているように見えるが・・・。

    「死」はその本人よりも周囲の「イベント」なのかもしれない。
    編集者や所属事務所、家族や友人、密着ドキュメンタリーの制作者、
    そして他の患者や医師に看護師、
    それぞれの立場と思惑によって、振る舞いや言動は演出されている。
    彼らにとって「死」は所詮想像の域を出ない”うわつら”でしかない。

    当の本人でさえ、死に対して”うわつら”の心構えしかできない。
    だから強気になったり、不安になったり、開き直ったり、取り乱したりする。
    このどうしようもない切ない限界が”うわつら”の本質なのかもしれない。

    小説家が意に反して本心を吐露する場面が二つ、強烈な印象を残す。
    ひとつは隣の病室に入院していたスキルス胃がんの若い患者が
    「一緒に行こう!」と小説家を強引にひきずり出す場面。
    必死の抵抗を試みる小説家は恐怖の叫び声を上げて目が覚める。
    死への恐怖心が爆発したシーンだった。

    もう一つは彼の弟子が、師匠も獲れなかった文学賞を受賞し、
    高い評価を得て世に出て行くのを見たとき。
    若い看護師から「すごく面白かった。サインをもらって欲しい」と
    賞を獲った弟子の新刊本を渡され、
    「いいなあー!いいなあー!」と絞り出すように嗚咽する姿に
    今彼が見ている孤独の闇を、一緒に覗き込んだ気がしてボロ泣きした。
    ほかの人々は生きている、自分は一人で死んでいく、
    ”連れの無い孤独”を初めて自覚して生への執着を吐露した場面。

    さらりと展開しながら、自然にクスリと笑わせる台詞と絶妙の間。
    ところどころに挿入されるエピソードの巧さ。
    大した事件も起こらないのに最後まで読ませる作風の小説家という設定だったが
    人生もそんな感じで終わっていくんだなあ、としみじみ思わせる作品。
    脚本・演出・主役の小説家を演じた板垣雄亮さん、何と味わい深い作品を生み出す方なのだろう。
    最高のランチ、ごちそうさまでした。







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    2022/12/11 00:33

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