超科学戦闘機スーパーホーク1号の着陸(再演) 公演情報 劇団鋼鉄村松「超科学戦闘機スーパーホーク1号の着陸(再演)」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    表層的には、子供の頃 TVやデパート屋上で観た正義のヒーロー”ショー”を思わせるようで 面白可笑しい。しかし<非現実の>ショーや妄想ではなく、地球防衛軍と悪の組織との対決を描いた世界である。壮大な世界観に街中のファミレスを登場させ、そのギャップというか違和感に戸惑いを覚えるが、そこに公演の肝がある。

    説明に「少年の頃からの夢を絶たれた男の絶望と再生の物語」とあるから、ファミレスで働いている今に至った男の軌跡を辿るような展開である。長い回想シーンによって男の過去と心情を説明し、それでも諦めきれない思いがファミレスの仕事ぶりに表れている。そこに現代社会人の悲哀が透けて見えるようだ。

    少しネタバレになるが、主人公の名は「御陵<みささぎ>」、他の地球防衛軍のメンバーは七草、尾鷲そして長宗我部である。一方、ファミレスの店長や従業員(バイト)は、鈴木、佐藤、田中である。姓によって選ばれた「特別」な人と庶民とを表現し、特別な人から普通の人へ、その心境を笑いの中で巧みに紡ぐ。御陵の穏やかならぬ旅路を「スーパーホーク1号の着陸」に準えて、上手く軟着陸出来たのだろうか…。
    (上演時間1時間45分 途中休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台美術は一段高い平台。そこにパイプ椅子2脚のほぼ素舞台。平台の色はRED&GRAYでスタイリッシュな感じ。
    公演は、超科学戦闘機という空想物をコメディタッチで描いているが、そこには現代社会で働く人々の<悲哀>意識が垣間見える。同時に逞しく生きるといった応援メッセージが込められている。硬軟といった二面性で描いているが、それを巧く体現している役者陣の熱演ー独自のセンスでの人物造形、それを物語の中で上手く昇華させている。

    選ばれた特別な人間、地球防衛軍の次期 正義のヒーロー最有力候補だった男が、訳あってファミレスの副店長へ転職し、慣れない仕事に従事することになった。過去、といっても2年前の栄光を引きずり悶々とする男の挫折・絶望と再生・希望の物語。単に面白可笑しいだけの内容ではなく、人の心を縛り付ける「特別」意識、もしくは「優越」を描き出す。

    次元の違う国家機関と街のファミレス副店長という立場というか立ち位置の変化によって生じる戸惑い。自己承認〈肯定〉が崩壊したのだ。これほどのレベルの違いではないが、例えばサラリーマンが会社組織の中で役職を解かれる、または定年退職で嘱託雇用になり、元部下に指示されたり といった身近なコトに通じるよう。その悲哀が面白可笑しく描かれている。

    意識の縛りとともに、肉体的な訓練ー毎日 腕立て伏せ100回を自身に課していた。事情によってそれが途切れた時、日課が断たれたという挫折感、しかし 行わなければという呪縛からも解放される。繰り返す腕立て伏せという さり気ない動作に、意味付けする巧さ。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2022/12/10 20:07

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