建築家とアッシリア皇帝 公演情報 世田谷パブリックシアター「建築家とアッシリア皇帝」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    第一幕85分休憩15分第二幕70分。
    但し休憩の間に成河(ソンハ)氏が役のまま、ステージ上の小道具を片付ける。ファン必見。

    飛行機が墜ち、無人島に流れ着いた岡本健一氏、そこには先客の土人、成河氏がいた。二年掛けて言葉を覚えさせた岡本氏、自身をアッシリアの皇帝と信じ込ませている。成河氏は何故か建築家に憧れて、建築学をねだる。言葉によってやっと意思の疎通が図れる筈が逆に難解になる二人の会話。この辺は『アルジャーノンに花束を』的。「早く幸せになる方法を教えてよ」。

    岡本氏の衣装がナチスの高官っぽい。
    成河氏は野生動物みたいな動き。次に何をするか目を離せない。ファンの気持ちが分かる。人間ではなく“役者”という生物。
    この長丁場、時には一人芝居で全く退屈させないのは凄い。

    不条理劇の大家とされるフェルナンド・アラバールの代表作。1967年パリで初演。1974年日本初演では山崎努氏が皇帝役を演った。余りにも肉体的に激しすぎる為、相手役は二人降りたという。山崎努氏も幕間で医者に注射を打って貰っていたそうだ。

    岡本健一氏と成河氏の魅力で成立させている世界。裸や女装のシーンも多く、華奢でか細く美しい肉体。グロテスクなシーンもコミカルでポップに味付けされており、不快感は沸かない。成河氏の要求に度々応える裏方。(『できるかな』っぽい)。壮大な「ごっこ遊び」に皆が付き合わされていく。
    逆に女優二人でこの作品を観たいと思った。どう映るだろうか?

    ネタバレBOX

    映画向きのネタだと思う。マーロン・ブランドとジョニー・デップでどうだろう。訳の分からない独白に必死に付き合う建築家。フランシス・フォード・コッポラかベルナルド・ベルトルッチ。莫大な製作費を掛けた思わせ振りなシーンの連続で中身は空っぽ。そんな空虚な映画を観たい。

    背景にビラビラした黒いビニールシートの海。海の上では戦車が流れ戦闘機が飛ぶ。どこかで戦争が行われているようだ。
    建築家は動物や自然を自在に操るシャーマン、太陽を沈ませ山を動かす。2000年近く生きている超自然的存在。
    皇帝はエディプス(オイディプス)・コンプレックス〈父を憎み母を我がものとせんとする無意識の欲望〉の権化。第二幕、手作りの仮面を使った裁判ごっこで己の罪を暴かれる。母親をハンマーで叩き殺し、犬に食わせたことを告白する。建築家からの死刑宣告に対し、同じくハンマーで殺されることを希望。建築家は「これはただの裁判ごっこだ」と拒むが皇帝の本気に押し切られる。
    建築家は彼の遺言通り、母の形見のコルセットと服を着て皇帝の死体を食べていく。脳味噌をストローで吸い取る。どんどん失われていく建築家の超自然的な力。最後まで食べ尽くすと建築家の姿は皇帝になってしまう。そこに飛行機が墜ち、皇帝の格好をした建築家が助けを求めて現れる。劇の冒頭のシーンが配役を入れ替えて繰り返し。

    自分の好みではなかった。やっぱり演劇の本質と生来的に肌が合わないことを実感。多分人間が嫌いなんだろう。演劇とは本来「ごっこ遊び」で、それを観客が夢中になって観ることによって成立。観客も「観客ごっこ」役として参加する。「ごっこ遊び」の昂揚、宗教的祭祀、燔祭。神に捧げるのか、神を喚び起こすのか、神を実感するのか。この空虚さの共有。

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    2022/12/05 17:38

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