遠ざかるネバーランド 公演情報 空想組曲「遠ざかるネバーランド」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    公演終了したので、改めて
    フライヤーの絵に何かを感じ、ほさかようさんのコメントに、「この人は本物」の予感がして、一切事前の予備知識なく、観に行きました。
    結果は、予感的中、いやそれ以上!!
    半世紀以上の観劇歴で、こんなにも、静謐な感動に満ちて、劇場を後にした記憶がありません。
    もしかしたら、「ピーターパン」ファンの方には不快な思いを感じさせるストーリー展開かもしれません。でも、子供の頃から、ファンタジーに現実逃避する童話等に何となく反感を感じていた私には、ダイレクトに心に響くストーリーでした。明確なメッセージがあり、それを具現化できる作演ほさかさんの才気、作者の構想を助ける美術等のスタッフの力量、作者の思いを完璧に体現した全ての役者陣の心ある演技に、心から惜しみない拍手を贈ります。
    最近、高いチケット代を取りながら、ファン心理にあぐらをかき、再演舞台をより良くなどという気概もない、おためごかしの商業演劇を上演している、似非演劇人や、長台詞だらけの割には、空疎な演劇まがいの作品を舞台に乗せ、悦に入っているような、どこかの劇場主宰に、是非是非、この心ある舞台をご覧頂きたくなりました。そうして、少しでも、演劇人としての初心を思い出してもらいたくなります。本当の演劇の美しい姿が、この舞台には満ち溢れていました。
    この舞台を創り上げて下さった全ての関係者に、心より、お礼を申しあげます。
    ★5つでは、とても足りません!

    ネタバレBOX

    冒頭、誰でも知っている「ピーターパン」のストーリーがテンポ良く、ダイジェストで語られる中、何故か、ちょっと胡散臭い感じのピーターパンの登場。何故だろう?と違和感を感じ、話はどうなって行くのか見当がつかないでいる内、だんだんと、誰もが知るネバーランドとは異質のストーリーがはめ込まれて行き、そのストーリー運びの巧さに、終始興味が尽きず、拝見しました。
    ネバーランドの背景画がチャチなのも、ピーターパンが、詐欺師っぽい胡散臭さがあったのも、話が進むに連れ、大いに納得。
    ネバーランドに、ウエンディの現実社会での情況が少しづつ織り込まれ、「飛ぼうとするな」と何度も訴える謎の少年の言葉が、実は飛び降り自殺を必死に阻止しようとする同級生の声だとわかった時、チャチなネバーランドの背景画が崩れ、一瞬にして、学校の屋上に変貌を遂げた様は、見事とただただ感嘆しました。
    人魚なのに泳げないビスカと、敵役のフォガーテが心を通わせるシーンにはカタルシスを感じました。
    以前から噂に聞く、ホチキスの小玉さんのタイガーリリーは、本当に存在感がピカイチで、クロムモリブデンの奥田さんは、同性でも惚れ惚れする愛らしさ。このお二人が、美術室での端末を異口同音に言う場面は、まるで双子のように息が合い、お二人の演技者としての並々ならぬ力量を物語っていて、良い意味で鳥肌が立つ程でした。
    ティンカーベルの武藤さんは、最初犬山イヌ子さん似だと思ったのですが、母親役に変容されてからの演技には、何度も涙腺が緩み、すっかり彼女の演技に魅了されました。
    謎の少年役の斉藤陽介さんの、必死に友達を救おうとする台詞には、心からの叫びがあり、この芝居を、全国のたくさんの若者に是非観てほしいと心底思いました。
    少年と少女の指が近づくところで、照明が落とされて行くラストシーンは、本当に秀逸でした。
    素晴らしい脚本と、それを体現されたこのカンパニーの全てのスタッフ、キャストに、賛辞を惜しみません。

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    2010/02/11 02:23

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