西方の人 公演情報 4RUDE「西方の人」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    クリストの一生
    『西方の人』(さいほうのひと)と聞けば、クリストの一生と唱える人は多いだろうと思う。芥川はとクリストの一生を自分の一生とリンクしていた感があったからだ。
    だから、今回のように無駄なセリフは全くなく、動きと少しのセリフだけで魅せる技は完璧だと思った。そこに芥川の静の精神を見た気がしたのだ。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    会場に入ると舞台の中央に梯子が設置されてる。
    おお~、あれがクリストの最後を表現した「折れた梯子」ね?なんつってちょっと感動。だから作品の終盤に描かれる場面を想定して、ちょっとドキドキ。

    でもって「折れた梯子」が、「天上から地上へ登る」と形容されている事から、いったい演出家はあの梯子を上から登らせるのか、それとも下から登らせるのか?または逆さに登らせるんだろうか?なんてワクワクしていた。。「天上から地上へ登る」の解釈の説は色々あって、クリストは地上より下にいたから地上より下が天上という説と、「地上から天上へ登る」の誤記ではないかという説もあったりして、この部分だけでもミステリアスだよね。で、結局、演出家は終盤で素直に下から登らせていたから、誤記説をとったのだろうか・・?

    芥川は、西方がクリストで東が老子や孔子と言い、クリストのロマン主義に対して老子が唱える「衛生学」をちょっと悪者扱いしているところがあって、更に突き詰めるならクリストを産んだマリアを崇拝していた感があった。だから、「我々はあらゆる女人の中に多少のマリアを感じるであらう。」なんて言葉を残してる訳だけれど、そのマリアを多少とも妻にも感じていたのだろうか?

    舞台上では妻への関わり方や家族との風景も描写される。序盤のおどろおどろしいあの世の世界の描写とは打って変わって、長男と次男の動きが素晴らしいのだ。気功のようなスローモーションの動きが緻密に計算され、無音の静寂の中に溶け込んで完璧に秀逸した世界を作り上げていた。なんだか、懐かしい家族の風景だった。

    やがて芥川は服毒自殺をするのだけれど、いつものことながら、芥川の自殺と太宰治のそれがワタクシの中でリンクする。どうやら、芥川と太宰はワタクシの中で同じ線上にいるらしかった。だから、芥川の小説も太宰の小説も乱読しないことに決めている。この二人には読者を取り込む魔性のようなものが潜んでて、こちらの精神まで持って行かれそうになるからだ。笑

    そして自殺するまでの芥川の苦悩や迷い、クリストの一生を芥川の一生となぞらえ、死と深く関わる瞬間を表現する稲川光の動きが絶妙なのだ。まるで何か他の生き物に体全体を乗っ取られたような動きだ。芥川龍之介の「人生は地獄よりも地獄的である。」は決して抽象ではない現実味を帯びている。

    ワタクシは舞踊に関しては殆ど無知である。しかし、この無知な心臓を熱い手でギュッと掴まれたような感触があった。

    照明、音楽、映像、美術、何かを唱えるような声、カルマ・・、それらと静の舞踊が重なって実に芸術的な舞台だと心服した。


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    2010/02/02 17:27

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  • まこと>
    今回の舞台は「西方の人」を熟読して初めて理解出来る催しだったかも知れません。そして独特の怪しげな描写もワタクシ好みでした。っていうより、作家自体がちょっと怪しげですもの。笑
    次回も期待しています。頑張ってくださいね。

    2010/02/11 22:33

    ご来場ありがとうございました。
    今回は色々と大変でしたが、このような評価を頂けると、次も頑張る、という心持ちになれます。次のハードルは更に高くなりますが、頑張ります。これからもよろしくお願いします。

    2010/02/11 21:05

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