実演鑑賞
初日観劇。すごいエキサイティングな芝居で、岡本健一、成河の自由奔放でエネルギーにあふれていた。猥雑にして純粋、聖にして俗、信仰と涜神、愛情と憎悪、等々と言われる戯曲だが、矛盾する要素を様々に読み取ることのできる、万華鏡のよう。古典ともいわれる作品なので、今回は珍しく事前に戯曲を読んでいたが、その戯曲からの予想を2倍も3倍も超えた。岡村健一が黒い女性下着に着替えていくシーンなど、戯曲にあっただろうか? グロテスクで、公序良俗への冒涜ともいえる挑発的な場面がいくつもあった。
次々話が変ってしまう、コントをいくつも繋げたようなつくり(特に1幕)なのだが、それだけではない。2幕は皇帝を被告にした裁判劇。証言者の合間合間に、幕間狂言を入れるよう。そして、最後は書くのがはばかられる展開になる(戯曲読んだのは2か月前なので、実は終わりの方は忘れていた)。
思い煩うことがあって、屈託した気分だったが、この芝居を見て元気が出た。それほど自由で突き抜けた芝居。ごっこ遊び、なりきり、すり替わり、女装、扮装、仮面劇、裁判劇、コント、ユーモア、暴力、殺人、処刑、血と性と食と、そうしたごった煮の生の人生と、演劇の原点のどろどろしたマグマをぶちまけたようだった。オペラ、音響、光、小物、衣装、美術も猥雑かつ大げさでよかった。
事前に戯曲を読んでいくなど頭でっかちの見方だが、私以外も頭でっかちそうな観客が多かった。こんな芝居を見ようというのは、それなりの演劇通であろう。でも素直な笑い声が絶えない。観客も理屈を離れて、感覚で受け止めて、舞台を楽しんでいた。最後列にずらりと立見席もある満員御礼。
2時間50分(休憩15分)と長いが、全然飽きない。