実演鑑賞
満足度★★★★★
面白い、お薦め。
劇作家協会新人戯曲賞 受賞作。
一見 オムニバスのように思えるが、何となく繋がりを感じさせる短編連作集といった構成。現代、東京という喧騒の中にいるが、人の心は満たされない、といった会話劇。漠然とした社会不安、そして人間の寂寞の対照として大都会が浮かび上がる。
物語は三場面で、それぞれ独立した話のようだが、台詞の中でそれとなく関係性を臭わせる。会話は、何となく いびつな男女の人間関係の鬩ぎ合いを描く。演出は、場景を都度転換し、状況と情況を表出し物語をしっかり支える。その丁寧さは、やはりSPIRAL MOONらしい。
一場…挫折して弟のマンションに転がり込んだ兄とその恋人、弟の三角関係の含みある会話、二場…その恋人の妹と援助交際をしている中年男の とぼけ思わせ振りな会話、三場…中年男の元妻と学生時代の恋人による探り合うような会話。その三場の同時進行するような関連構成は巧い。表し難い心情表現を味ある言葉(台詞)と演技で観せる。その機微、滋味ある会話は観応え十分だ。
そしてラストの風景は圧巻で、実に印象的である。
(上演時間1時間30分 途中休憩なし)