音楽劇「雨を乞わぬ人」 公演情報 黒色綺譚カナリア派「音楽劇「雨を乞わぬ人」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    人間描写に不満が
    「巫女が泣けば大雨が降り、村が滅びる」という言い伝えが信じられる村の話で、何やら横溝正史の世界のようなおどろおどろしい話。「こういう場面にしたい」という演出家の意図は要所要所でわかるが、点がうまく線につながっていないというか、趣向倒れという感があった。

    ネタバレBOX

    「村の奇習」というのは題材にしやすいのかもしれない。ずいぶん前に、世田谷パブリックシアターで「怪しき村の人々」という劇が市原悦子主演で上演され、歌や踊りも織り込まれ、麿赤児率いる暗黒舞踏まで登場した一種の音楽劇で、なかなか面白かったことを覚えている。部外者と村人、主人公の人生観や人間関係がくっきりと描かれていたからで、そういう秀作と比べると、本作が見劣りしてしまうのは否めない。
    シャーマン信仰と性、親子の愛憎、友情などが描かれているが、設定の特異性の割に人間の描き方が表面的で不満が残った。また、音楽劇というほどの印象ではなかった。宴の歌もどこかで聴いたようなありきたりのメロディだ。赤澤ムックは歌が巧いんだなーということはわかった(笑)。ふだん、シンガーとしても活動してるだけに、中里順子の歌はミュージカルっぽく声に伸びがあり、なかなか聴かせる。しかし、甘雨(桑原勝行)と瑞雨(佐藤みゆき)の歌はマイクに頼り、がなりたてているだけで、人前で歌うにはちょっと・・・という出来だった。役柄の人格がはちゃめちゃであっても、歌はきちんと歌うべきで、音程がはずれっぱなしでもいいということはないはず。わざとはずして歌ったのではないと思うが、ハモりようもない二重唱に思わず下を向いてしまった。先代の巫女(赤澤ムック)が冒頭でペニスを食いちぎってしまうなどインパクトの強い場面があるが、次代の巫女となる女児を産むため、性欲だけで生かされている巫女(牛水里美)と彼女を取り巻く村の男女たちという特異な設定ならば、後半はもう少しドラマチックなことが起こらないと、予想通り、妊娠して孤独になった巫女が号泣して雨が降るというだけでは物足りない。異文化としての都会の女子大生元子(中里順子)が都会ずれしていない、慎ましく牧歌的な女性のせいか、巫女(牛水里美)のテンションの高さに太刀打ちできないように感じてしまい、2人の女の共感と対立が演出上、際立ってこない。元子の恋人の和夫(芝原弘)の描写も村に入ってからはおざなりに見え、いったいどういうつもりで村に彼女を連れてきたのか理解できない。
    クライマックスで豪雨のシーンに「本水」を使うなど演出に凝ったつもりだろうが、自分にはいまひとつドラマとしての感動が薄かった。村人の中でも蔵での狂宴を「見ているだけ」という傍観者の立場をとる村娘の狐(升ノゾミ)の人間的背景もまったく描かれないので役が生きてこない。金田一耕助を思わせる民俗学者臼井(堀池直毅)の描き方も中途半端でもう少し元子との接点がほしかった。早口という設定だが、滑舌が良くないせいか、学術的説明が何を言っているかわからず、学者らしい説得力がない。村を出た元子が東京に帰り着き、サバサバした様子で余韻もないのも不自然だった。キャスト表に書かれている人物の簡単な説明紹介以上のことが舞台で描かれず、「この人はこういう人です。あとは観客のご想像にお任せします」というのでは、何をかいわんやである。要は「巫女」の特殊な身の上を一番書きたいらしくて、あとは補足程度になってしまったという感じ。観終わったあと、頭でっかちになるくらい髪を飾り立てたちっちゃな巫女さんが思い切り暴れまくったという印象しか残らなかった。昨年、『イヌ物語』で人間なのに飼い犬扱いされる役を赤澤ムックが演じたが、この作品では元子が巫女の飼い猫扱いされ、最後は「猫畜生!」とまで罵倒されてしまう。『イヌ物語』で人間を飼い犬扱いするのは引きこもりの女性で、理由は違うが、この巫女も蔵で引きこもり生活を送っているので、偶然なのか、影響を受けたのか、共通点を感じた。
    料金的にはもう少し安くてもよいと思った。
    細かいことでは開場と開演が10分遅れだったが、交通機関の遅延とか特別な理由があったのなら説明してほしかった。住宅地なので、外に客がいると近隣の迷惑になるようだが、「ここに広がらないでください」と言うだけで誘導のしかたもまずい。冬場に開場が10分遅れたら、人の群れが固まってもやむえない。

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    2010/01/21 22:33

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  • KAEさま

    ありがとうございます。自分の場合、観てるのがマイナーなのが多いかもしれませんが、
    今後ともよろしくお願いいたします。

    2010/01/28 07:26

    きゃるさん、早速にご返信頂き、恐縮です。
    きゃるさんの、観てきた欄を拝読したら、かなり、私の見知らぬ劇団のレビューが…。
    後学のために、きゃるさんを、気になる人に登録させて頂きました。
    私のこともご登録頂いたようで、ありがとうございます。
    これからも、きゃるさんのレビュー、楽しみにさせて頂きます。

    2010/01/26 11:27

    KAEさま

    コメントありがとうございました。お返事はKAEさまのほうに書かせていただきました。

    2010/01/26 08:11

    きゃるさんのレビュー、いつもこっそり拝読させて頂いています。
    観劇歴も、何と無く似通っているようで、勝手に親近感を覚えているのですが、感想は、同様の場合と、真逆の場合があり、いつも、コメントは控えておりました。
    ただ、このキャルさんのご感想には、一字一句同意見でしたので、つい、同感ですと、名乗りを挙げに、出てまいりました。
    これからも、キャルさんのレビュー、楽しみにしています。

    2010/01/23 20:46

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