実演鑑賞
満足度★★★★
原作は野坂昭如の「戦争童話集」、昨年も観劇しており 本公演で2回目。椿組としては3回目であるという。タイトル「潜水艦とクジラと・・・」は、語られる物語の中の一話+αの意である。そして何より大切なのは、副題「~忘れてはイケナイ物語り~」に込められた思(重)いであろう。文字で書かれた物語は、読み手の想像力で如何様にも思い描けるが、演劇は視覚を通してどのように描くのか?それを手作りという温もりをもって表現する、その発想の豊かさと工夫に感心する。
表層的には面白く、そして楽しそうに描い(演じ)ているが、勿論その中に描かれた内容は戦争の悲惨さ、命の尊さなどである。公演は、童話集からの話など6話(冒頭と最後の歌も含め)を休憩なしで緊密に繋いでいく。それは舞台正面に「8・15夏」と書かれた意味、そこから地続きであることを強調する、そんな演出のように思う。演出といえば、先に記したように 舞台美術は手作り感いっぱいで、戦時下という冷たさとは対照的に、仄々とした温かみが漂う。
椿組主宰の外波山文明氏が読み上げる「戦後なんて、この地球上に一度もおとずれていません。いつも戦時中です。今もどこかで戦争が行われている限り、永遠に『忘れてはイケナイ』物語りなのです」は、上演の意義そのもの。その言葉はウクライナ侵攻〈現実〉が如実に現わしている。
(上演時間1時間40分 途中休憩なし)