美しいヒポリタ 公演情報 世田谷シルク「美しいヒポリタ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    シェイクスピアに見せたい
    「夏の夜の夢」の世界がこんなふうにアレンジされるのかと興味深かった。アイディアが秀逸で、俳優陣も良く、楽しめました。泉下のシェイクスピアに見せたかったですねぇ。

    ネタバレBOX


    単に登場人物がキャラクター化されているというのではなく、シェイクスピアの劇中の台詞もきちんと聞かせ、「夏の夜の夢」の惚れ薬の効果が、携帯電話コンテンツ中の仮想世界に置き換えられるのが面白い。パスワードとニックネームを取り違えて入力したために起こる混乱や、出会い系サイトの現実など、面白く描かれていた。目立たない感じの社長の妻がタイテーニアとして傲慢に大胆に振舞う場面は出会い系サイトでの仮想人格を表現しているのだろうか。性別など実像がわからない中で、手探りでコミュニケーションをとり、タイテーニアがロバ男をステキな男性と思い込むように、相談に乗ってくれた男性と思い込んでいたのが夫の会社のOLだったとは。妻が夫の会社に手伝いに来て紹介される際、さりげなく夫の肩のゴミをとる仕草で、夫への思いが感じられる。妻は夫を愛しているが、たぶん、IT企業で仕事が忙しく、あまり妻をかまっていないのだろう。この妻はたぶん、それとなく、夫の浮気も感づいているのかもしれない。つい出会い系サイトにはまってしまったものの、家庭を壊そうという気はないのだ。夫の社長はカップルを作るのが趣味というか偶然というか・・・となっているが、自分の不倫相手の仲人を意図的に何組もやってのけるという上司が世の中にはいるというから、この社長も案外、そのくちかもしれない。「君だって結婚するんだろう」と柊(緑茶麻悠)に言う最後の台詞に男のずるさが出ている。堀川炎と岩田裕耳が演じる社長夫妻(タイテーニアとオーベロン)のリアルさがとても良く、「お互いを大切に、幸せになってくださいよ」と願わずにはいられなかった(笑)。岩田のキャスティングは堀川のたっての希望で実現したそうだ。作家には、脚本至上主義で俳優にはあまり興味を示さない人もいるが、ふだんから他劇団の俳優をしっかりチェックしてオファーを出す作・演出家を私は評価したい。
    原作では主役級で女優が演じることも多い妖精のパックが、生真面目なSEの上杉になぞらえたのも面白い。塚越健一の秋葉(ライサンダー)も原作のイメージとは異なり、これはこれで面白いし、俳優としての演技も良いのでこの劇では違和感がない。ただ、ライサンダーとディミートリアスはいずれも甲乙つけがたい美青年であるがゆえに、惚れ薬のいたずらでハーミアがライサンダーにすげなくされ、ヘレナが両手に花状態になる皮肉や絵面の美しさもまた、「夏の夜の夢」という芝居の魅力であることを再認識した。ブスではない青木(ヘレナ)がイケメンでもないオジサン風の秋葉(ディミートリアス)にブス呼ばわりされるのはちょっと抵抗があった(笑)。

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    2010/01/18 20:32

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