UTOPIA 公演情報 coconkukanunity「UTOPIA」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    ミステリー要素を含んだSFファンタジーといった作風。雨の日だけ出現する街はずれにある古物商が舞台。上演前からキャストが動き回り、時にストレッチする様は何を表現していたのだろうか。そして絶え間なく滴る水の音、こちらは容易に雨を連想することが出来る。役者陣は上手・下手に椅子を並べ控え、登場シーンに現れる。

    全体的に透明感、浮遊感を漂わし曖昧な印象を与える。それは物語の不思議な世界観を巧みに表しているように思う。
    (上演時間1時間20分 途中休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台美術は、心象風景とも言えるような配置。天井部からは長いモール紐(または縄暖簾)のようなものが吊るされ、上手に形の異なる四角い台3つ、下手にテーブル〈白いテーブルクロス〉かある。四隅に傘立てがあり、場景によって持ち歩く。薄暗い照明に、裸電球の暖色が輝き幻想・夢幻といった妖しい雰囲気を漂わす。
    キャストは、皆 白を基調としたゆったりとした衣装、それゆえ薄暗さに映え揺蕩うような演技がますます幻想さを増す。

    物語は、少女が雨の日に古物商を訪れ、自分の記憶を呼び覚ます、そんな依頼をするところから始まる。過去と現在が往還するのか、現実と夢幻の世界が交錯しているのか、はたまた自分探しという迷路に佇んでいるのか、その漠然とした世界観が興味を惹く。古物商に置かれている不要な品々、その商品が擬人化して思い思いの話をする。それぞれの商品の特徴が、物語を掻き回していく。

    また別の少女が古物商を訪れ、店主や商品と話をし出す。先の少女とこの少女の話は別次元であることは後々判明する。先に登場した少女は現実のしかも少し将来の話。後に登場した少女の正体が分かった時に、何故 商品と話が出来ているのかが解る。品物(物質)は不要になれば捨てられ、新しい物に取って代わられる。そして捨てずに何でも取っておくことは、いろいろな意味で不都合が生じる。今の世は情報過多、そして混合玉石の情報の中にいる。不要な情報と商品を同一視した説明には疑問もあるが…。そして物質の不要=捨てると人間の不要は同一視出来ない。そこに生き物=動物としての感情が生まれる。

    先の少女は亡くなった古物商の娘、そして後の少女は、自分の正体を知らなかった擬人化したネコであった。亡くなった古物商を何とか助けたい少女ネコは、助けを求めて街中(舞台回り)を走る。この光景が説明の中にある「私は走っていた」である。店主と称していた男は、生きていた時の店主が妻から貰った懐中時計という品物。擬人化した懐中時計に少女ネコは言う。時間を戻して店主を助けてほしいと…。生きている動物と生〈せい〉なき品物とでは考え方、価値観が違う。不要〈寿命〉ならば捨てるが前提なのだから…。そして品物にも持ち主との思いがあるという。時間の遡及は、商品とその持ち主との断絶を意味する。全体を通して文明批判(古物商⇨リサイクル⇨代替を連想)を表した物語であろうか。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2022/11/11 06:00

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