黒いインクの輝き 公演情報 ブルドッキングヘッドロック「黒いインクの輝き」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    厚みがある空気がもたらすもの
    描く意図がそこにあって、
    しっかりと描き抜けていくような
    鮮やかさに魅せられて。

    役者たちが作る舞台の厚みにも
    がっつりと惹かれました

    ネタバレBOX

    劇団初見です。

    客入れの時から
    ちょいとした遊びがあって、
    それが、舞台の空気を味わうためのアペリティフのよう。

    舞台はとある女流漫画家のアトリエ。
    彼女をとりまくアシスタントや、
    担当の編集者、
    さらには挨拶を兼ねて差し入れに訪れるアシスタントの
    母親の姿などが、ランダムなシーンの積み重ねで
    描かれていきます。
    場面を定義する時間の移動や空気の変化が、
    映像や役者達の雰囲気でしたたかにコントロールされていく。

    漫画家自身が姿を消してしまったことや
    漫画家の過去、
    彼女自身がすでにペンを取ることがなくなっていることなどが
    次第に明らかになって。
    さらには独立した元アシスタントや元旦那、
    その旦那を略奪した別の元アシスタントなどまでが絡んで、
    彼女自身や彼女を取り巻く世界に深さというか厚みが増していく。

    エピソードのひとつずつについての語り口がすごくしたたかなのです。
    詳しく語られるというわけではないのですが、
    酒乱のチーフアシスタントの鬱屈にしても、
    アシスタントを務める実の妹の想いにしても、
    アシスタント同士の確執にしても、
    ピントがビシっと決まっている感じで
    役者達のお芝居とともに
    観る側に心地よく伝わってくる。
    そのぶれのなさが、
    彼女を取り巻く世界の厚みとなって、
    終盤、鮮やかに
    ブランクとなった彼女の姿を浮かび上がらせるのです。

    最後のシーンの作りかたというか
    物語の収め方も鮮やか、
    うまいなあと思った。

    喜安作劇には、
    ナイロン100℃的なメソッドも随所に使われていて、
    それらがとても効果的に機能していて。
    たとえば、
    中盤に風景の中の本人がはけて
    シルエットだけがのこるという場面が差し入れられるのですが、
    その絵面が終盤のシーンと繋がったときには
    ぞくっときました。
    でも、物語から浮かんでくるのは
    ケラリーノ・サンドロヴィッチ氏が作り上げる
    観る側を一気に引き入れてしまうような
    圧倒的な俯瞰やさけがたい狂気や虚無ではなく、
    緻密な組み立てのなかにも
    どこかにまっとうな暖かさやペーソスが含まれていて・・・。
    喜安作劇から現れる
    物語自身の色や
    デフォルメの匙加減にとても惹かれる。

    その魅力がベースにあるから
    アシスタントの母親と漫画家の一シーンが
    とても納得できるし
    心に残るのです。

    役者達それぞれのお芝居もたっぷり堪能できて、
    こういうお芝居なら2時間強であっても
    まったく長い感じがしない。
    べたな言い方ですが、ほんと、とても面白かったです。

    0

    2010/01/15 12:54

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大