「カレル・チャペック〜水の足音〜」 公演情報 劇団印象-indian elephant-「「カレル・チャペック〜水の足音〜」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 映像鑑賞

    満足度★★★★★

    「国家と芸術家」シリーズ三部作、の最終作。・・と書いたが(何処かでそう目にしたと思って探したが行き当たらず)、ケストナー、藤田嗣治、ジョージ・オーウェルの続き四作目。
    劇場が狭かった前二作から芸劇へ。それに題材がカレル・チャペックという事で今回は劇場で観たい!と思っていたが結局、3度目の配信鑑賞となった。
    配信についても、前二作に比べ映像が断然良く、見返す事なく一回の視聴で台詞が聞き取れ、前方席での観劇気分を味わえた。
    だがもっと驚いたのは舞台の完成度、テキストの深さ、巧さ(執筆の神が味方したかのような..)である。
    チャペックと言えば「山椒魚戦争」を書いた著名な作家の一人であるが、演劇への関心から知り直した人物でもある。劇場で観た彼の戯曲「R.U.R」(ハツビロコウ)「母」(コットーネ)はいずれも「戦争」に触れた品だったが、本作もチャペックが執筆に生きた第一次大戦と第二次大戦の戦間期が舞台となり、大戦後誕生した民主国家チェコがやがてナチスの台頭した大国ドイツに翻弄される軌跡と密にドラマが進む。
    舞台はチャペックと兄ヨーゼフの家族=妻と幼い娘が住む家。若いチャペックがフラれたばかりの初恋の女性、彼女が交際する事になる新国家の大統領の息子、大統領本人、チャペック兄弟の親友、それにこの世ならぬ謎の女が訪れる。家族の葛藤と克服、逃れる事のできない国家と歴史の状況の中で精一杯生きる人間たちの人生が美しく刻まれていた。
    配信では避けていた☆5を付けた。

    物理的な圧力に晒された人々が、勝ち取った自由を手放さざるを得ない現実に直面する光景に、つい重ねてしまうのはわが国の事。日本は敗北を喫しつつあるが、これに関する報道は殆どなく、今どういう覚悟をせねばならないかを考える契機は希薄である。
    カレルと周囲の人物たちは苦境に悶えながらそれを克服する精神、歩き方を手にし、生を全うしようとする。早晩朽ちて国もろとも凋落させるだろう効用のなくなったシステムを温存し、「改革」のポーズだけを取ってその場をやり過ごす(その実やり遂げようとしているのは売国的な政策)我が国の中枢を、「それ」としてありのままに見る事・・舞台がくれた勇気を、今以上にゲンジツを見る態度に向けるよう促されている気が個人的にしている。

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    2022/11/07 12:35

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