満足度★★★★★
Dear,ハピネス
エキセントリックな妄想が濃度を上げながらゆるやかに、現実という静謐なサークルをまわり続けて着実にその形を失っていきながらアウトプットされる世界は、半信半疑であろうとも、受け入れざるを得ない現実として大胆に提示する作風と英語を日本語に直訳したような説明的なセリフを抑揚なく淡々と話す役者陣がその特異な世界観を更に唯一無二なものへと昇華させるイキウメだが、他の方々も言及されている通り、今回は少々勝手が違う。私も正直、戸惑った。なぜなら、立ちはだかる現実問題に追い詰められたひとたちは、そこにある対人関係をごまかさないでしっかり向き合おうとしていたからだ。
とはいえこの芝居を見た直後は、なんだか物足りなさが残った。けれど後々、思い返せばひとはそんなに不幸でない時、幸せについてあまり深刻にならないし、さほど執着しないものだと気づく。そう思うとこの、一見ほのぼのしたようにも思えるドラマには、不満を感じるくらいで丁度いいのかもしれない。
かつて人間として存在したモノたちと、何かが崩壊しかけた者たちが、ささやかな交流の先に、それぞれの世界でちゃんと生きようとする物語。110分。