手話裁判劇『テロ』 公演情報 神戸アートビレッジセンター「手話裁判劇『テロ』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    ピンク地底人3号さんは前回の『華指1832』に、続く2度目?の手話劇!
    手話と、文字と、言葉と、表情と…様々な媒体から伝えられる情報!
    障がい者の方にも優しい公演。
    様々な方が参加され、皆で作り上げた公演。
    命の天秤の物語、考えさせられた。

    ただ、この脚本は個人的に(理屈大好き現実派の私とは)相性が良くなかったので、普段なら★3つが良いところだけど、障がい者含め、皆様の頑張りが素晴らしく、★4つ付けておきます♪

    ネタバレBOX

    個人的にこの脚本とは相性が悪い気がした。
    実際、(私的には)間違いなく無罪な状況を、恣意的に有罪に誘導しようとしすぎて、非現実的な論証で、観ていて辟易とした。

    シンプルにパイロットから観た事実だけを挙げると、
    ①テロでハイジャックされた乗客160名の飛行機を、観客6万人のスタジアムに墜落させる為、迫っている。
    ②このままだと、間違いなく乗客160名と観客6万人が間違いなく死亡する。
    ③限界まで待ったが状況が好転せず、被害を最小限にする為、上官の許可無く乗客160名の飛行機を戦闘機が打ち落とし、観客6万人の命を救った。
    (撃ち落とさなければ、乗客160名に加え観客6万人の命も失われてしまう為、撃墜せず静観する行為は不作為による6万人の殺人に当たる)

    という状況なのに、この劇では恣意的に
    ①については、何故、観客を避難誘導しなかったのか?と詰め寄るが…
     →これは明らかにあり得ないミスであり、避難誘導すべきである(通常間違いなくそうしている筈)。
      今回は避難させ忘れたと言う、あり得ない状況をこの脚本では作り出しているが、これは警察や自治体が責任を持って対応すべき事であり、パイロット本人の責任外である。パイロット本人の罪を問う裁判とは全く無縁である。パイロットの置かれた状況は、あくまで目の前に6万人のスタジアムは後少しに迫っており、その際にどのように行動するかが問われている(何もしなければ不作為の殺人罪の筈である)。
     →加えて、仮にスタジアムの乗客を避難させてたとしても、テロ犯の目的がスタジアムとは限らない。(スタジアムが標的なのは嘘で別の標的がある可能性は否定できず)市街地に侵入させた時点でハイジャック機のもうツボで、何処に墜落させられるかも分からない。今回、スタジアムの観客を避難させ忘れた状況でスタジアムに近づいたため撃墜したが、スタジアムから1~2分も飛べば直ぐに市街地がある筈で、市街地での無差別テロを防止する上でも市街地に入る前に撃墜する事は不可避な筈。

    ②については、乗客はコックピットへの突入を試みており、突入できる可能性があった、との事だが、
     ハイジャックからずっと、コックピットへの突入を繰り返して1時間経っても突入できいないものが、後5分で侵入できる可能性は統計的に見てもほぼ皆無である(有っても数%未満)。
     また常識からすれば、そもそも、いかなる行為によっても、客席からコックピットへの侵入ができない構造になっている筈あり、侵入は不可能である。乗客が「もう少しで突入できる」と希望的な観測を述べていたとしも、構造的に突入はできないという判断は論理的で有り、理にかなっている。
     すなわち、このままいけば、ほぼ100%スタジアムに墜落し、乗客と観客が全員死亡する可能性が非常に高く、この状況は回避する必要がある。

    ③については、限界まで待ったが、被害を最小限にする為、ハイジャック機を打ち落としたのだが、この脚本では上官が指示を出さなかったとしてるが、出さないこと事態が前述の通り不作為の殺人であり、その様な上官はまずあり得ない。
    そもそもこの脚本では「命の天秤」と言っているが、天秤になっていない。
    天秤とはAかBどちらかの命を助け、どちらかの命を見捨てると言う、取捨選択になっている筈なのに、この状況だと、AとB両方見捨てるか、Aだけを見捨てるかなので、天秤となっていない(Aは間違いなく死亡が確定しているので取捨選択の範囲から除外されて、Bを助けるかどうかのみが選択範囲となる)。従ってこの場合は、被害最小にすべく、助けることができるB(観客)を助けるのが最善の策(結果として、助けることができないA(乗客)を見捨てることなったとしても)である。
    今回、撃墜しても良いと言う法律は棄却されたが、いかなる状況でも撃墜してはダメだとの法律もなく、状況に応じて(AとBを天秤にかけて殺害してはダメだが、今回は天秤にはなっておらず)是々非々で問われる筈である。
    被害最小限にする為に不可避の撃墜は、不作為による6万人の死亡を回避した点からも高く評価されるべきで、明らかに無罪であるべきである。

    また乗客に遺言を書く時間を与えず、突然殺害した。との責めが有ったが、これも無効である。既にハイジャックから1時間突入しようとして突入できていない。そんな中、機体が降下し始めたのであれば、墜落させられるのは明白であり、高度が下がって来ているのであれば、ますます危ない事を認識している筈。また上述の通り、コックピットへの侵入はほぼ不可能である事は周知の事実であり、通常の乗客なら(少なくとも突入に直接関与している乗客は多くても10名前後程度の筈で、彼らを除いた150名以上の乗客は何もすることがない筈で)高度が下がった時点で遺書を書き始めたはずである。

    以上から、ハイジャック機はそのままでは、ほぼ間違いなく、6万人のスタジアムに墜落し、乗客160人もろとも、死亡する事は明白であり、これを止められるのはパイロットだけである。被害を最小限に抑え、不作為の殺人を犯さない為には、間違いなく死亡するであろう乗客に犠牲になって貰うしかない。パイロットの取った行動は最善の策である。
    このため、パイロットを有罪に問う等は論外である。

    なので、脚本で指摘している点は間違いだらけであり、観ていて、とても居心地が悪く感じてしまった。ただ役者さんを始め、熱のこもった演技が素晴らしかったので、面白く拝見できたが、この脚本と私の相性は悪かった。

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    2022/11/03 23:31

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