短編劇集「新江古田のワケマエ」 公演情報 劇団二畳「短編劇集「新江古田のワケマエ」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    【A】「そう言われると今年一番はあの日かな」【B】「咲良を待ちながら」観劇   

    江古田にある古民家を改造した会場。劇団名からも明らかなように、二畳分のスペースと最小限の音響・照明効果だけで公演を行う。公演は、約30分の2短編の上演だが、実に味わい深い内容であった。
    もしかしたら遭遇する、若しくは経験するかもしれない、そんな奇妙な感覚にさせられる作品。現実から少し離れた設定だが、皆無とは言えない微妙なリアルさが面白い。同時に、会場が面している千川通りの車騒が、絶えず日常を意識させるから、何とも不思議な気分になる。

    勿論、素舞台で役者の演技力だけで観せることになるが、両作品の出演者とも見事な表現力であった。共通して言えるのは、「間の取り方」 その空白(無言)のような時間の使い方が上手い。何となく隙間は埋めたくなるが、敢えて話(筋)をピーンと張らないで、逆に弛めることで物語に込めたテーマらしきものを表現する。当日パンフにあった「日常とは違う時間の流れを感じて」は十分に伝わった。
    (上演時間1時間10分 途中休憩なし) 

    ネタバレBOX

    【A】「そう言われると今年一番はあの日かな」 
    場所は埼玉県飯能市、劇中でも言っていたがムーミンのテーマパーク「メッツァ」があるところ。サバイバルゲーム施設にゲームをするために来ていた砧三二六(中込博樹サン)は、尿意をもよおし、サバイバルゲームのフィールドを外れ山道へ。そこで自殺?首に縄を巻き付け、片方の靴が脱げている籾田桜那(丸山小百合サン)に出会う。少し酒に酔っているようで呂律が怪しい。2人が話していると、1日2杯のデリバリーコーヒー、行商人風の滝沢つばさ(たきざわちえ象サン)がやって来る。桜那はブラック企業に勤めているようで、労働条件は劣悪、辞めたいと呟く。しかし辛抱・我慢が足りないと思われるのが癪に障る。周りの評価も気になるが、つばさ は簡単に辞めちゃいなという。命があるから後悔出来る。要は命あっての物種だ。話の内容は重いが、雰囲気は柔らかい。コーヒー1杯2,000円、屋外にも関わらず本格的に豆を挽く。コポッコポッという音が聞こえるだけで、沈黙の時間が流れる。張り詰めた気持ちを和らげる、そんな優しい情景になってくる。

    中込さんは会場外から現れ、尿意をもよおしているわりには落ち着いている。二階から縄、それを手繰り寄せると 丸山さんがよろよろと階段から下りてくる。その首に縄が巻き付いている。片手にアルコールの3~4Lペットを持ち千鳥足である。2人の演技は珍妙であるが、観入るほど巧い。ほどなく会場外から たきざわ さんが荷物を背負い入ってくるが、その飄々とした演技が仄々とした雰囲気を漂わす。三者三様の演技は柔らかいが、観る者の心をつかんで離さない研ぎ澄まされた感性 表現力に感心する。

    【B】「咲良を待ちながら」   
    タイトルから「ゴドーを待ちながら」を連想するが、けっして不条理劇ではない。
    場所は江古田にある田中家、高校の卒業式の夕方。母 田中和子(五十嵐ミナ サン)、兄 武尊(吉岡圭介サン)が卒業祝いに寿司の出前の話をしているところへ牧田竜也(長谷川浩輝サン)がやって来る。高島平に住んでいる竜也は、三年間片想いの相手・咲良へその想いを伝えたい。しかし、咲良は友人とカラオケに行っており帰宅していない。仕方なく、その家族と共に帰りを待つことになる。そこへ父 正博(小泉匠久サン)も帰宅し事情を聞く。思わず缶ビール2本をたて続けに飲み、気を落ち着かせようとする。暫し無言、その何とも言えない気まずさ 微妙な空気が流れる。結局 咲良は帰ってこず、竜也の帰り際、父は一瞬彼の袖口を掴む。そこには在りし日の自分の姿を見たのかも知れない。父・母も高校の同級生で、母の(義)父からは帰れ!と言われた経験があるよう。そんな懐かしい気持ちになったかのよう。

    五十嵐さんは、娘への想いを告げに来たことを素早く察知する、自然体の母親を見事に体現する。小泉さんは、逆にどう対応すればよいのか戸惑う姿が 父親らしい。思わずアルコールに手を出すところは、その心境を上手く表現している。吉岡さんは妹のどんなところが好きなのか興味津々といった兄らしい感情を表す。ある意味 主人公の長谷川さんは、おどおどした落ち着きのなさ、そして ぎこちなくも真摯に接しようとする。それぞれの表情や仕草から溢れ出す感情表現、その場の少し軋んだ音が聞こえそうなほど上手い。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2022/10/29 16:24

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