テノヒラサイズの人生大車輪2022 公演情報 BALBOLABO「テノヒラサイズの人生大車輪2022」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    面白い、お薦め。
    当日パンフに作・演出のオカモト國ヒコ 氏が「情報解禁が2週間前という訳のわからない公演、『そして誰が来るんだよ、2週間前の告知で』」とあるが、それでも最終日の残席は僅かという状況だ。やはり面白い演劇は待ち望まれていることの証だろう。

    「世界一優しい監禁サスペンス!椅子だけですべてを表現する、奇跡のパフォーマンスコメディ!」という謳い文句、誇張なく上演時間がアッという間に過ぎる。さてコメディとあったが、劇中の台詞ではないが、右か左か行く判断を誤ると喜劇が悲劇になるような怖さを孕んでいる内容だ。公演という車輪が順調に回るか脱線するか、それはキャスト・スタッフの熱量次第ではなかろうか。僅か2週間前の情報解禁で この評判の良さ、見事であろう。
    (上演時間1時間50分 途中休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台美術はパイプ椅子が7脚、横に並んでいるだけ。そこに赤いツナギ服の男女7人が縛り付けられている。

    此処はどこだ、どうして監禁されたのか、お互いに面識がない、どうしたら脱出できるのか、といった謎が広がり そして深まる。ミステリアスな展開の脱出劇は、車輪のように重なり合うというもの。謎解きは、一人ひとりの生き方に関わっており、それぞれの人生を回想していくと…。結末は ぜひ劇場で観てほしい。

    物語の展開は、ジグソーパズルのピース(人)をはめていくような感じである。個々のピースの形は確かであるが、それを全体でみると うまく収まらない。人々のキャラクター、過去状況は鮮明になっていくが、それを組み合わせても釈然としない。その空白のような感覚を”余白”か”隙間”で捉えれば、”余裕”と”理屈”に分かれるかもしれない。ストーリーを重視すれば、キッチリ隙間は理屈で埋めたくなる。しかし、敢えてのパフォーマンス重視の観せ方にしている。その演出...外見上は全員ツナギ、パイプ椅子という同じものだが、人の内面を見れば、様々な人生模様が見えてくる。

    この芝居の面白いところは、それでも結末の方向によっては喜劇が悲劇に変る可能性があること。自分の知らないところで、人の役に立っていることもあれば、恨み妬みといった悪感情を抱かれている可能性もある。そこに懐が広く深いものを感じる。案外、喜劇が奇劇で、悲劇が飛劇かもしれない。公演(情報解禁が遅くても)を通して、小演劇の世界は口コミですよ、改めて演劇愛ある人の繋がりの大切さを知る。
    もう一つ、パイプ椅子を自由自在に組み合わせ色々な情景・状況等を作り出し、素舞台に豊かな世界観を演出する。役者は、その椅子を手際よく動かし、背凭れにある空間を潜り抜けといった身体表現で観(魅)せる。ほぼ全員が出ずっぱりで、名無しの役を演じ切る。その熱演こそがこの舞台を支えていると言えよう。勿論、照明効果で臨場感を表す。

    さて、”パフォーマンス”という身体性で観(魅)せるだけではなく、そこに社会性などとあまり堅いことは言わないが...。それでも現実と空想のような出来事を綯い交ぜにし、演劇的な興奮を加速させた快作。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2022/10/23 08:48

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