『雨の世界』 公演情報 ウテン結構「『雨の世界』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    雨の世界…冒頭はサスペンス風に始まるが、いつの間にか女同士の少し痛い友情物語に変転する。俗信の雨女、その悲哀と雨天(嵐)ゆえに知り合った旅人の話を交差させ、「雨」をテーマにした物語を抒情的に紡ぐ。更に雨女になった謂われ、「日知」といった家系的な繋がりを描くことで、ネガティブ イメージを払拭し前向きな姿を観せる。

    公演の魅力は、本当に幼い頃からの親しい友人ような演技、その息の合った自然な会話が実にいい。全編 効果音または音楽が流れシーンの雰囲気を漂わせる。また衣装の色彩は、赤・白・黒といった強調色で 薄暮のような室内空間に映える。
    (上演時間1時間20分) 

    ネタバレBOX

    舞台美術は、中央に大きなテーブル、壁際にいくつかの椅子が置かれている。上手奥にイーゼル、壁には5つの額縁とランプが均等に取り付けられている。天井にはシャンデリアが吊るされている。冒頭のみ大きな四角枠があり強風が吹きつけ、以降は この家のドアに転用される。ここは人里離れた館のようである。

    嵐の夜、一人の女・しおりが助けを求めて館のドアを叩く。館の主は幸子といい、快くしおりを館の中へ入れる。冒頭、強風と雷鳴の音響、幸子の老婆風の佇まいや喋り方で怪しげな雰囲気が漂う。世間話をしているうちに、幸子が若いということが分かる。そして自分は「雨女」と言い出す。

    場面は、学生時代に親しかった友人4人(男1人、女3人)との思い出話だが、必ずしも楽しい思い出だけではない。運動会やキャンプなどの楽しみにしていたイベントが中止になったのは、4人の中の誰かが「雨女」だからだという。さらに恋愛話によって仲違いが始まる。
    一方 しおりは、何でこんな嵐の夜に慣れない運転をしていたのか。幸子がしおりの様子から、状況を推理し始める。父親からの虐待、逃避行動するために嵐の日を選んだ。ここに心理学的な場面「過去<幸子>と現在<しおり>」の物語を挿入する。幸子の回想としおり の現状が直接繋がる訳ではなく、それぞれの話を交差させ「雨」に纏わる物語を紡ぐ。

    興味深かったのは、「雨女」は家系でもあるような説明。農村地域、そこで雨乞いを司る家があったという。子供の頃に見たTVマンガー小学校の遠足の時に雨が降り出したので、魔法で雨が降らないようにした。しかし 父はその行為を叱り、農家の人々にとって雨は大切なのだ と諭したーを思い出した。現象「雨」は、人によって、または時と場合によって捉え方(大切さ)が異なる。

    演出で面白いのが、降水現象を映像を使用した科学的な説明をする 一方、フロイトの心理学を室内を回りながら、しおりと幸子の会話で説明していく。
    音響は、暴風雨・雷鳴のサウンド・エフェクト、ピアノ、ギター、鉄琴(であろう)の楽器で奏でられる音楽が情景に応じて流れる。
    役者は女優4人、そのうち3人が一人二役を演じる。特に学生時代は演じているというよりは、普段から親しき友人の会話が繰り広げられるようだ。その自然体の演技に感心させられた。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2022/10/16 00:00

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