実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2022/10/07 (金) 19:00
初見の団体である。といっても主宰(この作品の作・演出)の椿紅鼓は何回か舞台で観ている。東方守護-EAST GUARDIAN- (出演者全員が椿姓を名乗る団体だった!)の「天守物語綺譚」や「阿弖流為-ATERUI-」、数々の秀作を発表しながらも解散した芸術集団れんこんきすた「雲隠れシンフォニエッタ」あたりだが、実はもっともっと数多く彼女の作品を目にしている。手に取っただけで目を奪われる時代絵巻AsHのチラシ群をデザインしている京山琴佳というのは椿紅鼓の別名なのだ。
舞台装置は花魁ものの芝居でよく見るタイプで、特に目新しさはないものの、豪華な雰囲気は出ている。
シェイクスピア「ロミオとジュリエット」と近松の「曽根崎心中」にヒントを得た物語だとのことだったが、なるほどこの2作がうまくミックスされている。
「曽根崎心中」といえば増村保造監督、梶芽衣子・宇崎竜童主演の映画が秀逸なものだったが(私の邦画BEST5の1本だ)、そのテンポの良さをも感じさせる。
殊に目を見張ったのは、役者陣の所作。若い人が作る時代劇では役者の所作がなっていなくて幻滅することが多いが、この舞台では隅々にまで演出の目が行き届いている。
残念だったのは勘定吟味役・東上左次衛門が屋敷の外を出歩く時にも着流しだったことと、主人公・菊之介の衣装。傾奇者(かぶきもの)じゃないんだからあんな派手な衣装はないだろう。演じる小山蓮司が北区AKTとは異なる役柄を好演していただけに残念。
初花役の濵田茉莉奈は初々しさを感じさせるが、時代劇としての演技はイマイチか…。
ラストは初花が「お前の鞘はこの胸だ」と剣を胸に突き立てるのかと思ったが、さすがにそれはなかった(笑)。
演出の端々に東方守護、今でいえば呼華歌劇団のような感じがあったのは意図的なものか。
タイトルの「仮名手本」というのは「仮名手本忠臣蔵」にあやかったのだろうが、この作品中では特に意味はない。