シャイヨの狂女 公演情報 劇団つばめ組「シャイヨの狂女」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    フランス戯曲 2幕。1945年のジャン・ジロドゥ作。第2次世界大戦中、ドイツ軍の占領下で執筆した、彼の晩年の作である。
    前半と後半とで劇風が異なって観えた公演。前半はパリのカフェで男たちが悪だくみを相談する光景であるが、演技が今一つで会話が弾まず冗長に感じる。後半は狂女が登場し活気が出てきて、騒がしさの中にテーマらしきものが観えてくる。

    さて冒頭、池袋駅のアナウンスは何を意味するのか、は誰もが疑問に思うところ。勿論 上演劇場がある池袋を指すが、同時に世界中の何処かで起きている紛争や侵攻といった きな臭い出来事が、どの国や地域においても例外ではない。日本においても起こり得ることを示唆している と思うが…。
    (上演時間2時間5分 途中休憩あり)

    ネタバレBOX

    舞台美術は、後景は色違いの板塀を市松模様のように張り合わせている。上手には鉄骨の塔のようなもの、もしかしてエッフェル塔か。上手客席寄りにテーブルと椅子のボックス席、下手奥はカウンターとカウンターチェア、客席寄りにL字型ベンチが置かれている。シンプルであるが、狂女達が所狭しと踊り歌うことを考慮した配置のようだ。

    物語は、パリの地下に金脈(石油)が埋蔵されているという荒唐無稽な仮定のもと、発掘のためパリを爆破しようという男達を、狂女と呼ばれる女性達が街を救おうと立ち上がり、彼らを地下の迷路に閉じ込めるという空想劇。
    前半は 社長・男爵・鉱山師が悪だくみの相談、その密談の会話が聞き取りづらく 荒唐無稽さが伝わらない。そのため、ぼそぼそ会話が続く冗長な感じになったのが残念だ。
    一転、後半は狂女4人を中心に物語を牽引する。狂女は皆 親しいのかと思えば、皮肉や辛辣な言葉がポンポンと飛び出す。同時に彼女たちが抱えている問題等も明らかになってくる。それでも「生きている」を感じさせる逞しさ(第二次世界大戦中の執筆を考えると意義深い)。狂女達は、男達の悪だくみに対し 一丸となって立ち向かう。

    物語は、資本主義批判と愛と正義の勝利を謳った風刺喜劇であるが、本公演(つばめ組)では、同時に反戦を思わせるような内容を盛り込んでいる。まず金脈のため街を壊すという発想に対し、敢然と立ち向かう女たち。それを狂女という奇抜な設定で批判する辛辣さ。そして悪だくみを企てた男達を裁くというシミュレーションにおいて、どんな悪人でも弁護士が必要だと言う。この裁くシーンが、一方的な言い分ではなく公平さを保つ。当日パンフで「中東テロ、世界各地で紛争」という言葉が書かれている。今、「侵攻」という言葉を毎日聞くが、双方の言い分を聞くということの大切さを改めて思う。が、物語では 悪事は看過せず、言い分(訳)は論破すると…。後ろの板塀の一部が開き 男達が入っていく。採掘と同時に封じ込めて銃撃する。大勢を一斉に抹殺するには戦争、そんな兆しが見えたら狂女に知らせるというブラックジョーク、笑うに笑えない怖さを感じた。

    男達が列をなし板塀内へ入っていくコミカルな動きは、流れる音楽と相まってTVゲームのドラクエシリーズのよう。そして狂女の一人、コンコルドの狂女・ジョゼフィヌ(岩村水咲サン)が全身白服のみならず、顔も白塗りで異彩・異形を放つ。演技も誇張した動きで思わず注視した。こちらは口裂け女を連想した。面白キャラクターを登場させ、遊び心にも溢れ妙味があったが、それだけに 繰り返しになるが前半の冗長さが残念だ。
    次回公演も楽しみにしております。

    0

    2022/10/09 11:49

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大