満足度★★★★★
人生を覗き見るような・・・
グリング一年ぶりの本公演。
そして私も約1年ぶりの東京での観劇。
当時1年間の活動休止を聞いたとき、次回公演はおそらく見られまいと諦めていたのに、まさか再びこの目で見ることが出来ようとは・・・ホント、人生何がどうなるかなんてわからんもんだ。
クライマックスの、聖美(荻原利映)と夫の広志(杉山文雄)のシーンで、聖美が広志に水を持って行こうとした瞬間。不意に涙が込み上げてきてどうしようもなくなった。
何気ない行為で、特に感動的な言葉があるわけでもない。けれどもその瞬間、彼らが共に過ごしてきた長い年月が突然私の中に生まれた気がしたのだ。そう感じたときには、もう涙が出てしまっていた。
エイズと共に生きることを余儀なくされた広志と、それでも強く生きていこうと励ます聖美。かれらが長い年月をかけて作り上げてきた絆が、“水を汲む”という些細な行為の1つに凝縮されているような気さえした。
グリングの舞台を見ていると、生きとし生けるものへの慈しみのようなものが感じられ、見た後に生きていることがとても素晴らしいことのように感じられてくる。
本当に魅力的な舞台だった。