実演鑑賞
満足度★★
芝居は生物だから、うまくいかないことはある。
それにしても、という出来である。やはり、一番の原因は戯曲だろう。素材そのものは、今の時代に合いそうな家庭崩壊と回復の話なのだが、設定があまりにもご都合主義である。だれか、制作側でも指摘しなかったのかと思うが、場当たりの行き当たりばったりで話がどんどん進む。親と離れて施設で育った男(田中駿介)が出来ちゃった結婚しようと妻(武田玲奈)の家庭を訪れるとそこは百の家訓がある家庭で、母親(宮地雅子)の強権のもと気のいい父(堀部圭亮)は右往左往。弟(堀夏喜)は家訓を破って永の座敷牢暮らし。
この設定で、妻の出産まで。気がめいるような2時間で、三十代の女性客が多い客席もシーンと静まり返って見ている。喜劇でもなければシリアスドラマでもない。陰鬱な時間が流れる。
救いは、舞台の現場が投げていなかったことで、役者は神妙に勤めているし、演出もとにかくつじつまを合わせようとする。宮地雅子など、ガラに合わない役でだいぶ苦労しただろう。
パルコが、有望な人材を次々と起用して時代に合わせた都会の中間演劇を作ろうと熱心なのはいいが、無手勝流にならないように。蓬莱竜太、横山拓也、小劇場でもまれて出てきた人たちは大丈夫だろうが、若い人にはケアしなければ。なにしろナマものなのだから。