ホームレッスン 公演情報 パルコ・プロデュース「ホームレッスン」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    100の家訓のある三上家、破ると減点されて、減点がたまると懲罰がある。懲罰は10点で物置に1カ月監禁、20点で離れの納屋で2か月謹慎というもの。長女(武田玲奈)の婚約者の大夢(田中俊介)は最初戸惑う。しかし、母に捨てられ施設育ちの大夢は、幸せになるには「自由よりルール」と家訓を必死に身に着け、すっかりなじんでいく。実は家訓をつくった三上家の母・奈津子(宮地雅子)は、かつて大夢の中学で担任だった。一緒にある事件に遭遇したことで、「自由よりルールだ」という確信を共有する。

    しかし、三上家には弟・朔太郎(堀夏喜)がいた。懲罰として1年半も換金されている弟を見て、揺らぐ大夢。朔太郎が包丁を持ち出して、まず、最初の事件が起きる。ベテラン宮地雅子の最初のかたくなさ、次第に心情を見せていく演技がぴか一だった。田中俊介は初めて見たが、あたふたしたり、頑固になったり、決して誇張でなく自然に感情の起伏を示してよかった。

    リビングと物置を裏表にした回り舞台のセット。最初は貧相に感じたが、家訓を巡る衝突が激しくなる場面では、右に左にゆらゆらとゆっくり回っては戻るのを繰り返す。家庭の動揺を示すよう。この演出はよかった。

    ネタバレBOX

    中学生の大夢「幸せって何?」、担任だった三上母「不幸じゃないことだよ。社会の求めるままにして受け入れてもらえば、不幸になることはない」という言葉が、「規律が大事」という大夢の人生観の根底にある。それに対し、三上弟が「大きな危険があっても、それに挑んでもっと大きな幸せになりたい」と、昔の母のような教師になりたいと繰り返す。ここに、本作の大きなポイントがある。記憶で書いたので、このままのセリフではない。ただ、これに近い。もう少し練り上げた言葉であれば、一層心に刺さっただろう。

    家訓にすっかり染まった大夢をみて、奈津子は自ら作った家訓の残酷さに気付く。まさに「反面教師」。しかし、家訓をやめることに今度は大夢が強硬に立ちはだかる。主客が逆転したような思いがけない展開に、果たして三上家の家訓はどうなるのか…。
    「今度はあなたが子供を捨てるのね!」ラストの一言に崩れ落ちる大夢の姿が、すべてを語っていた。エピローグの朔太郎も、後味の良い終わり方だった。

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    2022/10/05 16:17

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