みんな友だち 公演情報 こわっぱちゃん家「みんな友だち」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    劇団のコンセプトでもある「ポップなくせに理屈っぽい《ロジカルポップ》を売りに、笑いだけではなく しっかり泣かせる舞台を目指す」、そして この公演は、しっかり泣かせる物語である。
    公演を最後に、主人公で劇団員の晴森みき さんが役者業を引退する。物語は、彼女が演じる柚葉〈ゆずは〉の生と死を描いており、何となく最後=最期を重ねるようなイメージがあった。また舞台美術が凝っており、柚葉の人柄を上手く表していた。同時に彼女の主治医がしっかり寄り添うような演出も見事だ。
    (上演時間1時間55分 途中休憩なし)【A team】

    ネタバレBOX

    舞台美術は、カフェ&バーの店内。中央にドーナツ型カウンター、上手にソファとテーブル、下手にラックが置かれている。客席寄りに机とPCがあり、別空間であることが判る。中央奥は階段の踊り場のようで手摺も見える。

    柚葉は、大学時代からの友人・山波(瀧啓祐サン)が経営する店で働く。厨房スタッフ・ジロウ(トクダタクマ サン)も大学時代の友人。柚葉・山波・ジロウは仲間である。この店に通う常連客レイナ(山田梨佳サン)・奈々美(鳴海真奈美サン)・キツネ(作井茉紘〈麻衣子〉サン)は、柚葉に愚痴や悩みを話すことで憂さ晴らしが出来ている。人の話をうまく聞くことが出来る、そんな人柄をドーナツ型カウンター(の中)というセットが上手く機能している。四方八方に気を配りながら、如才なく応答できる。柚葉が外にいるのは、冒頭の悲痛な叫び声を発する時のみ。最後の公演ということもあり、出ずっぱりである。そして後からパイン(松ノ下タケル サン)がこの店の雰囲気が気に入り常連客になる。性別や年齢問わず優しく接する彼女に異変が…。

    健康診断の精密検査で急性白血病であることが分かる。余命宣告され、延命治療は行わない選択をする。自分らしく生きたい、それは常連客との他愛ない会話、特別な変化を求めない穏やかな暮らしである。その気持(余命宣告されたことも含め)を常連客に伝えたところ、その重たさに耐えかねて常連客は店に来なくなる。
    余命を余生と捉え、前向きに生きようとする姿。主治医・吉岡先生(海老原直サン)は、生きているうちに葬式=生前葬を行うことを提案する。吉岡医師は店外の別スペースにずっと居る。病院の診察室から柚葉の様子を窺がっているよう。そして生前葬が執り行われる時に、姿を消すという見事な演出。果たして、常連客は生前葬に来てくれるのか。

    人は死んでも、人の記憶・思いから消えなければ(人々の中で)生きている、と聞いたことがある。真に死ぬとは人に忘れられたとき、そう考えれば 本公演で役者業を引退しても、こわっぱちゃん家で活躍した俳優・晴森みき を忘れなければいいだけのこと。当日パンフに作・演出トクダタクマ氏が「『役者人生』という言葉はよくできた言葉で、そんな役者である彼女の人生を彼女らしく締めくくらせたい、そんな思いで今回の作品を作った」と。アフタートークで彼女の卒業式を行ったが、その時 トクダタクマ氏は女優ではなく俳優という言葉を使った。女性というだけではなく 人間的な魅力を語っていた。公演(舞台)でも実生活でも、後悔のない選択と決断、そしてラストの台詞「楽しかった!」は秀逸だ。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2022/10/03 18:05

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