実演鑑賞
満足度★★★★
イキウメらしい作品で、この再演ではかなり、エンタティメント化も進んでいる。長くもなって、2時間20分ほど。
イキウメは設定の奇想天外度で大きく面白さが左右される。初期作品は日常の一部を隠してしまうような設定が成功していた。「天の敵」では「生命」。一人だけ死なない、となると、どうなるか。
この不死を発見した満州戦線の飢餓の経緯から始まり、不死の条件は、人の生き血を食料にしなければならないとか、日光のもとに出られない、とか非日常の条件もあるけど、それよりも、周囲の人間と共に老いていけない、という日常的な苦しい条件もある。この辺のぎくしゃくも巧みに設定されていて、ドラマは面白く展開する。
幕開きのシーンがテレビの料理番組で、そこでは自然食品とか、長寿のための食生活とか、現代の食・健康ブームが描かれていて、これも、イキウメの特色だが、思わぬ切り口からの現代世相批評になっている。ここが今回はずばり、当たった。
舞台も、かなり余裕を持っていて、一杯飾りの舞台作りにも随所にあるお遊び的なシーンも外してはいない。全体は若干長いかな。プロローグの実際に料理するところとか、最後の部分は少しもたれる。お馴染の俳優たちもすっかりガラと持ち役が決まっていて楽しませてくれる。小劇場としてはこういう独自の作品で、ここまで来たのはお見事で、観客も随分楽しませてもらった。
本多劇場で十九公演。見た回もほとんど満席だった。