高き彼物 公演情報 加藤健一事務所「高き彼物」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    高き彼物を熱く目指す
    練り込まれてきちんと形になっているものが、提示されている感じ。
    なんというか、きちんと仕事がされている感じが心地よいのだ。

    観劇していて身も心も預けられるような安心感さえある。

    ネタバレBOX

    ストーリーは、主人公の元教師が、悩みを持つ少年と偶然出会い、彼が前に進むことを決意する手伝いをする。さらに、それをきっかけとし、元教師が自らの過去の秘密と向き合い、家族と再生していくというものだ。

    加藤さんが演じる主人公の元教師の「熱さ」がいい。
    「高き彼物」を目指す視線と姿勢がそこに感じられる。

    その姿勢が、後に明らかになる彼の秘密の出来事を生んでしまうというのは皮肉である。
    しかし、それに向き合うという姿勢もまた、この人だからこそ、と思わせる。
    とはいうものの、それに向き合い家族や自分の愛する人に告白できるには、時間とタイミングが必要だったのだろう。

    とても重い話を含んでいるのだが、気持ちの良い展開が先に待っている。
    それは、あり得ないような展開であったとしても観客も望んでいるような方向である。
    それが単なる秘密の告白だけが話の山場ではない、この舞台の面白さでもある。

    深刻なのだが、明るく救いのある話、こんな物語を演じ、観客に伝えるのはとても難しいと思う。しかし、それを見事に見せてくれた。

    小泉今日子の演じる教師もいい。
    すっとした佇まいと同様の、自分が愛する元教師の驚くべき告白にも、いささか動じることなく、受け入れ、自らのものとするのだ。
    そんな人に愛された人、つまり元教師の人柄までもうかがえる。

    元教師の祖父もいい。
    緊迫したストーリーになりがちな中にあって、緊張感を解きほぐすような、佇まいそのものがとてもいいのだ。

    元教師の告白は、なんとなく『ベニスに死す』を思い起こした。

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    2009/11/30 00:31

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